2011 Fiscal Year Annual Research Report
就学前障害児支援における連携強化に向けた情報交換システムモデルの開発
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11J06287
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 陽介 東北大学, 大学院・教育情報学研究部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 就学前障害児 / 保護者との連携 / 支援スタッフ同士の連携 / 情報交換 / ICTの活用 |
Research Abstract |
本研究課題の目的達成に向け、現在は以下の2点を遂行している。 1点目は、情報交換及びICT活用に関する全国調査である。この取り組みに関して本年度は、調査項目を精査するために、2010年に実施した質問紙調査のデータに詳細な分析を加えた。その過程で、保護者の情報交換に対する満足度は、連絡ノートが持つ「子どもの日常的な様子や変化が交換されやすい」という優れた特性によって向上している可能性がある、との重要な仮説を得た。そのため現在は、この仮説検証を目的の中心に置いた質問紙調査の準備を進めている。 2点目は、就学前障害児支援向け情報交換システムモデルの開発と検証である。この取り組みに関して今年度は、上記1点目の成果と先行研究を踏まえ、保護者の情報交換に対する満足度の向上を重視したモデルを設計・開発した。このモデルには、連絡ノートよりもICTを活用した情報交換のほうが「子どもの日常的な様子や変化が交換されやすい」という要素を充実させる、という仮説を含んでいる。このモデルをもとに、フィージビリティも考慮し、Social Networking Service (SNS)を利用したプロトタイプシステムを実装した。また、当該システムが即座に臨床現場で適用可能となったことから、研究実施計画を繰り上げて、連絡ノートとの比較を通したユーザビリティテストと実践検討を実施した。その結果、保護者・支援スタッフの両者を対象とした検討から、a)連絡ノートと同程度のユーザビリティが確保されていること、b)「子どもの日常的な様子や変化」はSNSのほうがより充実して交換できること、が確認され、臨床上の意義が得られた。今後は、ユーザビリティとフィージビリティの更なる向上を目指したモデルの設計・開発を継続し、実践を通した検証を重ねる予定である。 なお今年度は、所属研究室等の関連プロジェクトにも参加し、臨床現場の実践者と積極的な議論を交わしながら本研究を遂行してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的達成には、1)全国調査を通じた基礎資料の集約と、2)システムモデルの設計・開発を必要としている。1)では、年度当初の予定を進める中で、保護者の情報交換に対する満足度を向上させる要因が示唆できた。これにより、今後実施する調査では、基礎資料の収集だけでなく、仮説検証を目的としたデータ収集が可能となる。2)では、年度当初の予定を大幅に繰り上げて、ユーザビリティテストや実践検討が実施できた。これにより、臨床現場における課題が明らかとなり、それがユーザビリティやフィージビリティの更なる向上を目指した設計・開発に繋がる。以上から、本年度の研究遂行は、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定として、1点目の情報交換及びICT活用に関する全国調査では、質問紙の作成を継続し、予備調査を通じた信頼性・妥当性の検証を経て、本調査用の質問紙を完成させる。その後、完成した質問紙を用いて本調査を実施し、本年度に明らかとなった仮説を中心に検証を進める。しかし、本研究課題では支援スタッフも対象としているが、本年度はそちら着目した検討が希薄となっている。そのため次年度は、支援スタッフの視点からみた情報交換の検討も加える予定である。また2点目の就学前障害児支援向け情報交換システムモデルの開発と検証では、引き続きユーザビリティやフィージビリティの更なる向上を目指した設計・開発を進め、臨床現場での適用を通じた検証を繰り返す予定である。
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