2012 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉ニュートリノを用いた新たな解析手法による最後のニュートリノ振動検出
Project/Area Number |
11J06289
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
前田 順平 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 原子炉 / 素粒子 / Double Chooz / θ13 / フランス / 国際情報交換 |
Research Abstract |
この研究はDouble Chooz実験でもともと予定されているガドリニウム原子による中性子捕獲事象ではなく、水素原子による中性子捕獲事象を用いたニュートリノ信号の同定、及びニュートリノ振動角θ_<13>の測定である。本年度は昨年度まで取得したデータを用いて実際にθ_<13>測定を行った。選別方法を定めた後、検出効率、その不定性及びバックグラウンドの見積もりを行い、最終的に水素原子による中性子捕獲時用を用いたθ_<13>の結果を12月に発表した。統計量が増える一方で混入してくるバックグラウンドも増えたため、新たなカットを導入した。最終的なニュートリノ信号候補に環境ガンマ線などによるアクシデンタルバックグラウンドが約半分残ったが、それぞれのバックグラウンドを正確に見積もることに主眼を置き、θ_<13>を導出できるところまで持っていくことに成功した。 求めたθ_<13>の結果は sin^22θ_<13>=0.097±0.034(stat)±0.034(syst) となり、まだ誤差が大きいがガドリニウム原子による解析や他国で行われている実験と良い一致を示した結果となった。この結果は論文にまとめ、Physics Letters Bに投稿した。 この研究は既存のガドリニウム原子を用いた解析とは独立な統計を用いており、ニュートリノの統計量も約2倍ある。従っていずれガドリニウム原子の解析と合わせることによってより良い感度でのθ_<13>測定が可能となる。2013年度は感度の向上とガドリニウム原子の解析との複合によってより良い精度でのθ_<13>測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度までに取得したデータを用いて実際に水素原子捕獲によって得られるθ13の値を求めた。この結果は論文にまとめられ、Physics Letters Bに投稿した。現在はより精度を上げるための研究を行っており、初期データで結果を出すという当初の計画以上に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度出した結果において、ニュートリノ候補のうちバックグラウンドの量が半分程度となった。より良い結果を得るためにはバックグラウンドを減らす手法を考案することにあると考えている。このためにはシグナルとバックグラウンドの特徴を表す量を用いた多変数解析を考えている。またこれまでの解析であるガドリニウム原子に捕獲された事象と合わせることによって、より精度を出すことも可能であると考えている。
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