2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳内の感覚情報復号化における神経相関の重要性の定量的解明
Project/Area Number |
11J06477
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大泉 匡史 独立行政法人理化学研究所, 農数理研究チーム, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 統合情報理論 / 統合情報量 / ECoG / 意識 / 意識レベル / 麻酔 |
Research Abstract |
本研究は神経細胞がどれくらい協調的に情報処理を行っているかを定量化する解析手法の開発、及びそれの実データへの適用を目標としている。協調的な情報処理とは、神経細胞が独立に情報を処理しているのではなく、相互作用して情報のやり取りをし、情報処理を行うことを言う。神経細胞が独立に情報処理をしている場合は、それぞれの神経細胞の活動をばらばらに考えても、神経細胞がシステム全体として行っている情報処理との間に差はない。一方、協調的に情報が処理されている場合は、神経細胞それぞれが行っている情報処理をばらばらに考えてしまうと情報の損失が生まれる。情報の損失の度合いがどれくらい協調的な情報処理が行われているかの程度に他ならない。 協調的な情報処理を定量化する理論として、Wisconsin大学Giulio Tononi氏が提唱した統合情報理論(IIT)を用いている。IITの言葉では協調的な情報処理の度合いは統合情報量と呼ばれている。IITは統合情報量によって意識レベルと意識の中身の双方を説明する理論である。現在、この理論を発展させることをGiulio Tononi氏との共同研究により行っている。現在この研究に関する論文を執筆中である。 それと並行して、理論を実データに適用し、意識レベルの定量化を試みることを理化学研究所藤井直敬氏らとの共同研究によって行っている。IITは元の理論のままでは計算量の困難から、実データへの適用は事実上不可能であった。そこで我々は統合情報量を計算する、より実践的な方法を新しく提案した。この新たな手法を用いて、猿の脳表面全体から128個の電極を用いて記録したECoGデータにおける統合情報量の計算を行っている。IITは統合情報量が意識のレベルと相関すると予測しており、この予測を検証している。具体的には深い麻酔によって猿の意識がなくなった時に、統合情報量が大きく減少するか否かの検証である。提案した新たな手法及びECoGデータの解析の結果に関して、論文の執筆が完了し、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Giulio Tononi氏との共同研究によるIITの発展に関しては現在論文執筆中である。理論をECoGデータに適用する研究に関しては論文執筆が完了し、現在査読中である。以上のことにより研究の目的の達成度としてはおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はIITの発展に関する研究に関しての論文執筆を今年度中に終わらせることがまず第一の目標となる。これと並行して、麻酔下のデータだけでなく、睡眠のデータに関してもIITによる解析を行い、統合情報量が意識レベルと相関するかどうかの検証を行う。睡眠のデータに関してはヒトECoGデータ及びEEGデータの解析を行い、従来の睡眠のステージ分け、REM,NREM I-IVと統合情報量とが相関するかの解析を行う予定である。
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