2011 Fiscal Year Annual Research Report
文化進化研究における方法論的・形而上学的多元主義の考察
Project/Area Number |
11J06524
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中尾 央 名古屋大学, 情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 科学哲学 / 生物学の哲学 |
Research Abstract |
研究計画にも記述したように,今年度はまず,生物学で発展させられた系統学的手法を文化の進化に適用した文化系統学について考察を行い,中尾央・三中信宏『文化系統学への招待-文化の進化的パターンを探る』という論文集を企画することができた(実際には2012年5月に出版予定である).ここでは私が系統学の哲学的側面を考察し,他の執筆者の方には文化系統学の具体的な研究例,あるいは系統推定法の歴史的な側面について考察を行って頂いた.また,昨年度より継続してきたPittsburgh大学のEdouard Machelyとの共同研究について,7月にSalt Lake Cityで開催されたInternational society for history,philosophy,and sociology of biologyのmeeting,そして同月にFranceのNancyで開催されたCongress of logic,methodology,and philosophy of scienceという二つの国際学会で発表を行った.また,年度末にはBiology&Philosophy誌への投稿も行った.ここでは相手からの有害な行為に対してこちら側も有害な行為で仕返しをするという罰(punishment)がいかにして進化したかについて,バクテリアや植物,そしてヒトやヒト以外の哺乳類における罰の具体例を考察しながら従来とは異なる仮説を提唱し,それを支持する議論を展開した.この研究ではある種の進化心理学的手法(現在のヒトの行動や心理からその選択圧を推定する)に加え,文化的集団選択というヒトの文化進化特有の選択圧など,さまざまな要因を合わせて考察しており,これまで私が行ってきた進化心理学や二重継承説など,文化の進化的研究に関する様々な研究プログラムの是非を具体的な研究に即して検討した研究にもなっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を踏まえつつも,さらに新しい方向へと研究が拡大し,非常に興味深い結果も得られつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
海外の研究者との共同研究をさらに推進する:Edouard Macheryだけでなく,彼を通じてStephen Stichなどの研究者が進めようとしている文化間比較の研究プロジェクト,または1-3月に滞在したYork UniversityのKristin Andrewsと行っている教育の進化プロジェクトなどを進めていく.また,国内の心理学者や生物学者とも共同研究を進め,実験的手法を用いて哲学的課題に取り組んでいく.
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