2012 Fiscal Year Annual Research Report
文化進化研究における方法論的・形而上学的多元主義の考察
Project/Area Number |
11J06524
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中尾 央 名古屋大学, 情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 科学哲学 / 生物学の哲学 |
Research Abstract |
研究計画にも記述したように,今年度は自身の博士論文を完成させ,提出した(2013年3月25日に学位取得).『文化進化研究における統合された研究プログラムに向けた方法論的多元性』というこの博士論文では,これまで行ってきた人間行動の進化的研究の研究プログラム(進化心理学,人間行動生態学,文化と遺伝子の二重継承説)の批判的検討と擁護に加え,罰の進化,教育の進化などを具体的な素材をも加えながら,文化進化研究がいかにして多元的な方法論で進められるべきであるかを論じた.これはある意味,本研究課題である「文化進化研究における形而上学的・方法論的多元性」に関して一定の回答を与えたことになる.しかし,本年度はそれだけでなく,本研究計画から派生したいくつかの研究プロジェクトを始動し,なおかつ一定の成果を得てきている.たとえばナチュラル・ペダゴジー説という教育の進化に関する仮説を批判的に検討し,その成果の一端は博士論文でも発表し,さらに別の雑誌へ投稿中である.他にも,昨年度より継続していた罰の進化に関しては,「罰の進化」というタイトルの論文を「生物学と哲学」誌へ発表することができた.教育も罰も文化を定着・進化させる重要なメカニズムの一つであり,それらのメカニズムの進化について一定の見解を,しかも生物学の哲学のトップ・ジャーナルである「生物学と哲学」に発表できたことは非常に重要な意義があると考えられる.また,動物の文化に関する研究の一端として,動物の心の哲学の第一人者の一人であるクリスティン・アンドリュースを招聘し,動物の心の哲学に関する国際ワークショップを開催して今後の研究に関する一定の指針を得る事ができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を踏まえつつも,さらに新しい方向へと研究が拡大し,非常に興味深い結果も得られつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは動物の心の哲学,特に擬人主義や比較心理学における比較法の方法論に関して批判的に検討しつつ,動物における文化研究の哲学的検討,さらには動物における文化の進化が人間の文化進化にいかなる含意を持ちうるのかを考察する(その成果は2013年夏頃の生物学の歴史,哲学,社会学の国際学会などで発表予定である).その後,今年度提出した学位論文を単著として出版できるよう,再度構成や議論などを考え直していく予定である.
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