2011 Fiscal Year Annual Research Report
アートプロジェクトが地域社会に付与する社会的価値の評価枠組みの構築
Project/Area Number |
11J06584
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松本 文子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地域づくり / アートプロジェクト / Qualitative GIS / ソーシャルキャピタル / 地域計画 |
Research Abstract |
本研究では、地域計画学的視点から、アートプロジェクトがどのような社会的価値を有し、どのように地域社会に貢献するかについて、関係する要因とメカニズムを明らかにするため、(1)インテンシブなインタビューに基づいてアートプロジェクトが誘引するSCおよび創造性の創出、多様性や持続可能性への理解促進、についてのメカニズムを構築し、(2)質問紙による調査回答の定量的分析を通した創出メカニズムの検証および調査結果の比較、(3)GIS(地理情報システム)による地図化や分析を行い、地理的要因も含めて研究結果を検証し、最終的に(4)調査研究結果を統合し、アートプロジェクトの社会的価値評価について政策的提言を行うことを成果目標とする。今年度は、(1)アートプロジェクトの有するSCおよび創造性創出メカニズムの構築、の達成を目標とした。 研究実施計画にもとづき、事例「大地の芸術祭」で住民から成る支援組織の関係者5人を対象として、インテンシブなインタビュー調査を実施した。これにより、芸術祭開始後6年(開催3回)を経過して地域が変化し、地域住民の参加がより自発的になり、プロジェクト継続に対してより貢献しようとする動きがみられることが分かった。また、米国オハイオ州立大学で滞在研究中に、GIS(地理情報システム)分野での新しい方法論Geo-Narrativeを習得し、この方法論を用いて、インタビュー調査対象者それぞれの生活に時空間的視点からどういった影響があったかを再度調査した。現在、インタビューデータのコーディング、時空間情報のGIS化を進め、論文化を目指している。 6か月の海外滞在により、新たな調査データを収集することが困難ではあったが、既に獲得していたデータを用いて、本研究の核となるマルチメソッドの研究方法を発展させるべく、京町家という文化財に対してGISを用いて滅失要因を量的に分析するとともに、Geo-Narattiveの方法論を用いて質的分析を行い、論文として発表した。同時に、それらの成果について4度の国際学会で発表し、海外の研究者と意見交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究費申請時には、海外滞在を予定していなかったが、「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム(以下:大航海プログラム)」の採択によって6カ月間米国に滞在することとなり、国内事例についての新たな調査データの収集を十分に行うことができなかった。しかし、米国滞在中にQualltatlveGISに関する研究スキルを身につけ、4度の国際学会発表によって研究者ネットワークを構築するなどの想定外の進展もあり、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も大航海プログラムによって2ヶ月以上の海外滞在研究を予定しており、国内事例の調査回数が減少し、質問紙調査の実施が遅れる可能性があるが、代わりに海外事例の調査によって内容を補い、研究課題について海外研究者と議論し、国際的な視野を加えることとする。これにより、アートプロジェクトの社会的価値の評価に関わる普遍的な問題や国際的な状況、国内外の比較が可能になり、研究課題がより発展すると考えている。
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