2011 Fiscal Year Annual Research Report
NF-E2 p45による巨核球成熟および血小板機能の制御メカニズムの解明
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11J06793
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 理恵 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 血小板産生 / 巨核球分化 / 転写因子 / p45 / トランスジェニックマウス / ChIP-Seq |
Research Abstract |
p45は小Maf群因子とヘテロ2量体を構成し、Maf群因子認識配列(MARE)に結合する転写活性化因子であり、巨核球の胞体突起形成過程において必須の機能を果たしている。p45欠損巨核球のマイクロアレイ解析と、野生型巨核球での抗p45抗体を用いたChIP-Seq解析により、p45が血小板機能を支える遺伝子群(血小板関連遺伝子群)を直接制御することが明らかになった。しかしながら、p45による血小板関連遺伝子の制御がもつ意義は不明であり、血小板関連遺伝子の発現量の変化が生体内における血小板機能の亢進や低下をもたらし得るかどうか、また血小板機能が亢進・低下する病態にp45が関与しているかどうかに関する報告はこれまでになされていなかった。 そこで、p45による血小板関連遺伝子の発現制御が、実際に血小板機能の亢進や低下につながるかどうかを調べるため、N末端38アミノ酸を欠損したp45を内在性のp45の代わりに巨核球特異的に発現させることでp45の活性が低下した遺伝子改変マウス(Δ38p 45発現マウス)を作製し、巨核球における血小板関連遺伝子群の発現と血小板機能の変化の解析に取り組んだ。その結果、Δ38 p45発現マウスの巨核球では、血小板関連遺伝子群の発現レベルが低下することがわかった。さらに、これらのマウスの血小板を用いて、血小板の活性化刺激であるトロンビンへの応答性を解析したところ、予想どおり、血小板の機能低下が観察された。すなわち、p45が巨核球において血小板の機能調節に貢献していることが個体レベルで実証された。これらのことから、p45が血小板産生のみならず血小板の機能調節にも関与すること、また、巨核球が成熟過程においてp45活性を変化させることにより、産生される血小板機能を変化させることができることが明らかになった。今後、血小板の活性が変化している病態においてp45の機能貢献を解析し、巨核球におけるp45の機能制御が血小板機能の新たな治療標的となることを期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p45が巨核球において血小板の機能調節に貢献していることを個体レベルで実証することができたことから、次年度に行う予定であった「担癌状態における巨核球の解析」に早めに取り組むことができている。p45遺伝子の発現制御機構の解析に用いるp45遺伝子を含む約200kbのバクテリア人工染色体(BAC)クローンを用いたレポーターマウスの作製および解析に関しては、構築作製に時間がかかっているものの、改善しながら精力的に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に明らかにしたp45の巨核球における血小板の機能調節について、血小板の活性化している病態に着目し解析を試みる。血小板の活性化している病態のうち、担癌状態については現在解析を進めつつある。また、実際に巨核球の分化過程や血小板の機能が亢進するような病態において、p45がどの段階において発現し、標的遺伝子の活性化に作用しているのかを明らかにするため、マウス個体においてp45遺伝子の発現をEGFPによりモニタリングできるシステムを確立する。p45遺伝子を含む約200kbpのBACクローンを用いて、p45遺伝子の第2エキソンにEGFP cDNAを挿入したトランスジーンを作成し、トランスジェニックマウスを作成する予定である。
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