2012 Fiscal Year Annual Research Report
フランス文学における蒐集家像についての研究-バルザックからプルーストへ-
Project/Area Number |
11J06909
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅間 哲平 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | プルースト / ゴンクール / 蒐集家 / フランス文学 / コレクション / 19世紀 |
Research Abstract |
エドモン・ド・ゴンクール(1822-1896)とジュール・ド・ゴンクール(1830-1870)は、小説、歴史書、美術評論、日記、戯曲など様々な文学ジャンルで活躍した文学者であるが、美術作品にも造詣が深く、フランス18世紀の美術作品や日本の工芸品を蒐集していたことで知られる。ゴンクール兄弟は、本研究の中心となるマルセル・プルースト(1871-1922)の生きた時代の蒐集文化を先導した人物であると言える。 プルーストが言及しているゴンクール兄弟の作品は、『総裁政府治下のフランス社会の歴史』(1855)、『十八世紀の美術』(1859-1875)、『ジェルミニー・ラセルトゥ』(小説1864、戯曲1888)、『デュ・バリー夫人』(1878)、『芸術家の家』(1881)、『日記』(1887-1896)である。『日記』については別の機会に調査を行ったので、それ以外の作品についてプルーストの全作品、書簡における言及を網羅することを心がけた。断片的な言及を体系的に調査することによって、ゴンクール兄弟が提唱した蒐集(コレクション)という文化活動が、プルーストの著作に与えた影響を、文化史的な文脈からだけではなく文学史的な関係から明らかにすることを目指した。 その結果、『総裁政府治下のフランス社会の歴史』や『デュ・バリー夫人』といったゴンクール兄弟の歴史書は、プルーストの小説『失われた時を求めて』の中で言及される美術作品とりわけ工芸作品の描写のために利用されたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究では、プルーストのゴンクール兄弟についての言及を網羅的に調査し、その内容について分析することを試みた。初期芸術評論、書簡、小説と言った様々な様態のテクストの中に散らばっているゴンクールに対するプルーストの考えをまとめる作業は骨の折れるものであったが、この作業を通してコレクション文化についてのプルーストの考えの一端を明らかにすることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目のバルザックについての研究および二年目のゴンクールについての研究によって、十九世紀のフランス文学における蒐集家像のおおよその伝統が描き出せたと考える。この成果をもとに、このような文学的伝統を二十世紀の小説家マルセル・プルーストがどのように受け継いだのか、またバルザック・ゴンクールとプルーストの違いはどこにあるのかを明らかにすることが今後の問題となる。本年度は研究の成果を発表することを心がけたい。
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