2012 Fiscal Year Annual Research Report
接触言語ジュバ・アラビア語のドキュメンテーション:その多様性の見地から
Project/Area Number |
11J06924
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲尾 周一郎 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 南スーダン / ジュバ・アラビア語 / 社会言語学 / 記述言語学 / ピジン・クレオール / 言語接触 / ドキュメンテーション / アラビア語 |
Research Abstract |
平成24年度には、南スーダンにおいてジュバ・アラビア語のドキュメンテーションを中心とする2ヶ月程度の調査を行った。また、イギリスにおいて3週間程度の文献調査、学術的交流を行った。また、日本ナイル・エチオピア学会等での発表や海外英文論文集への投稿等により、研究成果を広く公開した。 平成24年度の調査においては、まず当初計画していたジュバ・アラビア語の文法(焦点化構文・談話構造等)に関する調査、民話や劇脚本の収集などを行い、博士論文執筆のためのデータを拡充した。また、ジュバ大学・国際夏期言語学協会・南スーダン文化遺産省等において学術的交流を行い、今後の研究基盤を確立した。 また、南スーダンにおいてある種のことば遊びが発生していることを発見し、その詳細な言語学的記述を行った。また、文献調査の結果、極めて類似したことば遊びがアラビア半島を中心に分布したことを解明し、南スーダンのことば遊びとの歴史的関係が明らかになった。この結果に基づき、これまでのジュバ・アラビア語体系を見直したうえで、通言語的なことば遊びの音韻類型論に関する先行研究を批判的に検討した論文を執筆した。 さらに、この調査では平成23年度の調査結果をフィールド調査に活かし、南スーダン・ジュバ市マラキア地区に在住する都市民の言語や文化を調査した。この結果、マラキア地区の住民により話されるジュバ・アラビア語は古風な特徴を残すことが明らかとなった。これに加え、マラキア地区の形成史、特殊な憑依儀礼や舞踊文化の存在等が明らかとなった。また、これらについて研究発表を行い、本研究が学際的な意義を持つことを確認した。 以上に加え、イギリでの調査の結果、ジュバ・アラビア語の生成と発展に関する植民地文書を多数発見した。この成果は、平成25年度に予定されている国際会議等で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フィールド調査の結果、当初計画していたジュバ・アラビア語のドキュメンテーションが達成された。これに加え、当初の計画では考慮していなかった歴史言語学的視点を導入し、イギリスで文献調査を行った結果、ジュバ・アラビア語の古期段階に当たるアラビア語ピジン等に関する資料が多数発見された。また、今年度調査に基づき、ジュバの都市史・都市文化に関する研究発表を行ったことで、言語学以外の学術分野にも貢献することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には南スーダンにおけるフィールド調査を行い、平成24年度までに行ってきたジュバ・アラビア語の文法調査を補完する。これにより、博士論文A descriptive study of Juba Arabicを執筆する。なお、制度の改変のため、南スーダンビザ取得には近隣のケニアまたはウガンダに渡航する必要がある。この際に同国の南スーダン人難民キャンプ等での言語調査を行うことで、研究効率の向上を図る。また、2013年11月に開催予定の国際アラビア語方言学会において、植民地期ナイル峡谷におけるアラビア語ピジンの生成に関する研究発表を行う予定である。
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