2011 Fiscal Year Annual Research Report
サブナノ秒パルスによる非熱平衡プラズマの形成とその医療応用
Project/Area Number |
11J06997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八木 一平 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プラズマ医療 / プラズマ-生体相互作用 / ガン治療 / マウス線維芽細胞 / アポトーシスの誘導 / 極短パルス高電圧 / 非熱的低温プラズマ / 大気圧放電 |
Research Abstract |
本研究の目的は、既存の熱プラズマでは治療対象に熱的損傷を与えてしまうのに対し、極短時間のパルス放電プラズマを用いることで広範な生体に対しプラズマ医療の効果を実現すること。これに加えて、プラズマと生体間の相互作用を解明することである。 上記の目的に対する研究計画として、初年度は極短パルス放電による非熱平衡プラズマの形成とその優位性の検証、次年度は非熱平衡プラズマの照射によるラジカル生成機構とその生体作用の解明を掲げている。本年は初年度であり、左記計画に示す初年度計画を達成するとともに、次年度の課題となるプラズマ中の活性種計測と生体相互作用の解明にも取り組み、初歩的な実験成果を収めることができた。 具体的成果について、初年度計画に相当する『非熱平衡プラズマの形成』では、従来本研究室では不可能であった7ナノ秒程度のきわめて短いパルス状高電圧の形成を実現した。これにより、人体(外皮)に照射しても電気的・熱的に刺激が少ないプラズマの発生に成功した。この非熱平衡プラズマの形成は、これまで適用困難であった広範な生体組織に対してプラズマを使った医療効果を実現するために極めて重要な成果である。続いて、次年度計画である『非熱平衡プラズマの照射によるらラジカル生成機構とその生体作用の解明』について、レーザー誘起蛍光(LIF)法により、プラズマ中で最も反応性が高いと期待されるOHラジカルの生成機構を計測した。その結果、生体表面を模擬した水面上において通常よりも高いラジカル密度が観測されており、OHラジカルが本研究で対象とする生体作用の主体となっている可能性を示唆している。これは、これまで理解不能だったプラズマー生体間の相互作用、つまり『プラズマ中の何が生体に作用しているか』を解明するための大きな一歩であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として、初年度は『極短パルス放電による非熱平衡プラズマの形成とその優位性の検証』、次年度は『非熱平衡プラズマの照射によるラジカル生成機構とその生体作用の解明』を掲げている。本年は初年度であり、左記計画に示す初年度計画を達成するとともに、次年度の課題となるプラズマ中の活性種計測と生体相互作用の解明にも取り組み、初歩的な実験成果を収めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、プラズマ中に含まれる『どの化学的活性種(ラジカル)が生体作用をもたらすのか』、特にアポトーシスと呼ばれる細胞死を誘導する因子を特定したいと考えている。この因子を特定することで、ガン治療や低侵襲治療に対して従来法と異なる技術の提案が可能となる。 具体的には、共同研究先の東京都市大学と連携してマウス線維芽細胞(NIH3T3)に対して、本研究で開発した非熱平衡プラズマを照射した際のアポトーシス作用を検証する。さらに、プラズマ中の活性種をレーザー誘起蛍光(LIF)法により定量計測した結果と比較対応することで、上記目的を達成したいと考える。
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Research Products
(1 results)