2013 Fiscal Year Annual Research Report
サブナノ秒パルスによる非熱平衡プラズマの形成とその医療応用
Project/Area Number |
11J06997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八木 一平 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プラズマ医療応用 / 癌治療 / 化学的活性種計測 / 細胞生存率 / マウス動物実験 / パルスパワー電源 |
Research Abstract |
研究背景 : 非熱平衡プラズマは化学的活性種の生成場であり, これを生体に曝すことで抗癌作用や止血・創傷治癒に代表される医療効果が報告されている。医療効果の原因はプラズマ中の活性種であると考えられているが, その作用機構は未解明な部分が多く, 医療効果の最適化や実用化の壁となっている。 非熱平衡プラズマの形成 : 本研究は, ナノ秒パルスプラズマと呼ぶ新たな方式を提案し, 高速なスイッチング電源の開発により非熱平衡プラズマの発生を実現した。この発生方式は, 従来法と異なり放電ガスを選ばないため, 生成される活性種の種類と発生量を幅広く変更することが出来る。また, 金属電極を誘電体の被覆なしで使用できるため, 複雑な電極構造やワイヤー上のコンパクトな設計が可能となり, 内視鏡や電気メスなど既存デバイスへの適用が比較的容易にできるという特徴を持つ。 癌細胞・マウス腫瘍へのプラズマ照射効果の検証 : 本プラズマ源の医療効果を検証するため, 皮膚癌細胞とマウス腫瘍モデルによる実験を行った。皮膚癌細胞に対して, 癌治療に有用だと考えられるアポトーシス細胞死を誘導することが分かった。マウスの皮膚腫瘍に5日間連続でプラズマ照射するで, 一定程度の抗癌作用が得られた。以上より, 独自のプラズマ発生方式を提案し, その治療効果を細胞・動物レベルで証明した。 動物細胞への活性種の影響 : 照射対象から蒸散した水分の2次元分布をレーザー誘起蛍光法(LIF)により計測し, 活性種の生成に影響を与える対象表面の湿度をガス流速により制御した。生体作用が強いと考えられる酸素原子O(3P), ヒドロキシルラジカルOH(X^2P), 一酸化窒素NO(X^2P)をHF法により計測し, これらが細胞の生存率に与える影響を評価した。その結果, 放電ガスの酸素濃度よりも対象表面の湿度環境に依存して生細胞数が減少しており, 特にOHの投入量に相関がみられた。このように活性種と生体効果を定量的に議論した研究は世界初である。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(6 results)