Research Abstract |
乳児はどのようにして,複雑な世界から有益な情報を獲得していくのだろうか?本研究の目的は,社会的世界において幼い乳児の学習メカニズムを実証的に検討することにある。近年,乳児期初期の学習メカニズムについて注目が集まる中,理論的考察とともに実証的な研究が多くなされ,ヒトのコミュニケーション特性に基づいた学習理論が提唱されている。これらの先行研究に対し,申請者は乳児の学習においてコミュニカティブなシグナルの源がどれほど関連しているか,特に,乳児にとって,ヒトが特別な情報の源であり得るのかについて着目した。本研究では,乳児の学習が,ヒトに特別に適応しているのかどうか検証するために,ヒト以外のエージェントとして,ヒューマノイドロボットを用い,ヒトとロボットからの学習を体系的に比較した。 研究1では,乳児期初期の学習において,学習の対象となるエージェントそれ自体は,乳児の学習にどのような影響をもたらすのか検討をおこなった。12ヶ月児を対象に,初期学習の形態の1つである視線追従を用いることにより,ヒトとロボットが乳児の学習に与える影響を比較した。その結果,乳児は学習において,ヒトを情報の主な源であると捉えている可能性が示された。これは,乳児はヒトから特異的に学習するかもしれないことを示唆している。研究2において,乳児は他者の視線に追従する際その先に参照物を見つけることを期待するかどうかを検証した。また,視線に対する期待はヒトに限定されているのかどうかを調べる為に,ロボットの視線と比較した。その結果,12ヶ月児はヒトの視線の先に物体が現れることを予測したが,ロボットの視線にはそのような予測をしなかった。また,10ヶ月児においては,ヒトとロボットのいずれの条件おいても物体の出現を予測できなかった。本研究の結果は,ヒトとロボットの視線に帰属する参照的性質が異なることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳児の学習に関する研究において、国内の学会や他大学の研究会等で発表するとともに,現在国際誌に論文を投稿中であるため。また,来年度は,国際学会において発表が採択されているため。
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