2011 Fiscal Year Annual Research Report
偏微分方程式の解に対する精度保証付き数値計算法の発展
Project/Area Number |
11J07191
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高安 亮紀 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 半線形偏微分方程式 / 混合型有限要素法 / 精度保証付き数値計算 / 構成的誤差評価 |
Research Abstract |
任意多角形領域上での汎用的な計算機援用証明手法の開発: 偏微分方程式を任意多角形領域上で解析的に解くことはほとんど不可能であるが,得られた数値解の近傍で解の一意存在性を計算機援用証明する手法を偏微分方程式の精度保証付き数値計算と呼ぶ。非線形偏微分方程式の精度保証付き数値計算法に関する先行研究では,対象の領域を凸領域に仮定することが多い.しかし,実用的な手法を確立するためは,任意多角形領域上で偏微分方程式の解を検証する必要がある.特に非凸な多角形領域を考える場合,偏微分方程式の弱解に滑らかさの欠如が起こり,従来の誤差評価式が破綻する.そこで我々はHyper-circle equationを利用した事後誤差評価式を用いて,解の検証を可能にした.本手法は我々が提案したNewton-Kantorovichの定理を基礎とする従来手法の高い汎用性を維持するので,先行研究の非凸領域上への対応である領域の変換などの面倒な事前処理が不要になる.すなわち任意多角形領域について自動的に対応することが可能になった. 高次Raviart-Thomas混合型有限要素を用いた高精度化: 任意多角形領域を考える場合,滑らかさの欠如により偏微分方程式の精度保証付き数値計算で必要な残差評価が減少しない現象が起こる.これを回避するために混合型有限要素を用いた平滑化を行い,残差が効率よく減少するような評価式を提案した.Poisson方程式に対する混合型有限要素法の理論は良く研究されており,これを用いて残差評価に対してほぼ最適な評価式を得る事ができた.さらに高次のRaviart-Thomas混合型有限要素を用いると残差評価の収束オーダーが低次の場合よりも,より良くなる事を精度保証付き数値計算例で示し,高次要素を用いた高精度な残差評価法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に任意多角形領域上での半線形偏微分方程式に対する精度保証付き数値計算法を構築し,実用性のあるアルゴリズムが完成した.その際に高次Raviart-Thomas混合型有限要素を用いた高精度な残差評価を考案できたことは望外の成果である.結果的に先行研究に比べてより良い残差評価を提案することに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した手法の最大の強みは,任意多角形領域に自動的に対応できることである.この強みを生かし,今後は(1)線形化微分作用素に対する逆作用のノルム評価法.(2)提案手法の反応拡散系の数理モデルへの適応.(3)放物型偏微分方程式の精度保証付き数値計算法の確立.をそれぞれ行う.(1)については任意多角形領域上でのLaplacianに対する精度保証付き固有値評価を基にした手法が開発できる.(2)は当初の課題内容には入っていないが,偏微分方程式の精度保証付き数値計算法の実用問題への適用例として研究を進める.その際,Neumann境界条件を考慮する必要があることに注意が必要である.(3)は当初の予定通り,解析半群の有理関数近似を用いた世界初の理論構築を試みる.
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Research Products
(12 results)