2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07278
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
ジスク マシューヨセフ 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 言語接触(language contact) / 意味借用(semantic loans) / 書記行為表現(expressions of writing) / 啓蒙表現(expressions of enlightenment) / 中古・中世漢字仮名交じり文データベース(Database of Medieval Japanese Kanji-Kana Mixed Script Texts) |
Research Abstract |
本年度、日本語の固有の語彙である和語における漢字・漢文訓読を媒介とした意味借用という現象について文献調査及び考察を中心に進めた。意味借用とは、ある言語の固有の語が他言語との接触により、本来持たなかった意味を取り入れ、意味拡張する現象を指すが、日本語においては漢字・漢文訓読を通して、古代中国語から借用された意味が少なからず存在すると思われる。本年度は、このような漢字を媒介として借用された意味の中でも書記行為や啓蒙に関わる表現を中心に取り上げて調査を行った。 ジスク(2012印刷中)「啓蒙表現における漢字を媒介とした意味借用-和語「あかす」の意味変化過程における「明」字の影響-」(『国語文字史の研究』13)では、「あかす」という語を取り上げ、「あかす」が漢文訓読において「明」字の訓として定着することにより、本来有しなかった「ものの意味をはっきりさせる」という意味を取り入れたことを明らかにし、意味借用が書記行為・啓蒙という中国からもたらされた文化概念において起こりやすいことを指摘した。その他の啓蒙表現として「あきらむ」(究明する義)「あきらか」「あきらけし」(はっきりしている義)「まなぶ」「まねぶ」(学問を修める義)について調査・検討を行った。「あきらむ」については第106回訓点語学会研究発表会(平成24年5月)にて口頭発表することになった(受理済み)。書記行為表現については、和語「のる」「のす」における「載」字からの影響について調査し、結果として「載」字から「記載する」義を取り入れていることが判明した。その調査結果・検討をまとめた論文を執筆した(平成24年4月に投稿する予定)。 また、本年度は具体例の調査以外に「中古・中世漢字仮名交じり文データベース」の作成を行い、『雑談集』『榻鴫暁筆』の2作品(約50万字)の電子テキスト化を完成した。
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Research Products
(1 results)