2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07285
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
脇川 祐介 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 光伝導 / 超分子 / 磁場効果 |
Research Abstract |
超分子半導体における一重項励起子由来のキャリアの動力学的研究成果を基盤に、本年度は三重項励起子由来の光キャリアダイナミクスについて研究した。主として光誘起電荷ならびに発光スペクトルに対する温度依存性を調べた。光誘起電荷の磁場効果の温度依存性を詳細に調べた結果、三重項励起子は光照射直後のキャリア生成過程だけでなく、キャリア輸送過程にも重要な役割を果たしていることを示すことがわかった。観測された磁場効果の時間変化はトラップサイトに捕捉されたキャリアと三重項励起子の対を経由した脱トラップ過程(ex-C_t過程)を反映しており、ex-C_t過程の実時間観測に初めて成功した。また速度論に基づいた解析から、磁場効果時間変化は三重項励起子の減衰定数に著しく依存することが明らかとなった。減衰定数は50-200Kの温度範囲で10^6-10^7s^<-1>に変化した。このような三重項励起子が関わる複雑なダイナミクスは、三重項励起子の長い寿命に由来すると考えている。しかしながら、三重項励起子は中性で無発光性なため、現有装置では直接検出することができない。そこで、三重項励起子ダイナミクスを検証する実験装置を新たに考案した。獲得した科学研究費を用いて、ナノ秒時間分解過渡吸収測定装置の立ち上げを本年度行い、ほぼ完成させた。現在、測定プログラムおよび装置の最適化を行っている。 また、P型半導体であるHexabenzocoronene (HBC)超分子集合体のキャリアダイナミクスにおける温度効果を検討した。光キャリア前駆体であるジェミネート電子正孔対の寿命は温度に依存し、温度の減少に伴い増加した。これはキャリア生成における解離過程の温度依存性を反映しており、解離過程における活性化エネルギーは0.03eV程度であると見積もった。現在、詳細に議論するために、クーロン場中の拡散理論に基づいた一次元キャリア生成に対する理論計算を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、次世代太陽電池材料として期待される超分子半導体の光キャリアダイナミクスの解明である。本年度の最重要課題である過渡吸収測定装置がほぼ完成し、キャリア輸送過程に対する三重項励起子の寄与を初めて実時間観測したため、(1)の評価をした。特に、捕捉されたキャリアと三重項励起子の対を経由した脱トラップ過程の実時間観測の先行例はなく、自らの評価は高い。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は完成した過渡吸収装置を用いて、薄膜に生成した三重項励起子の観測を行う予定である。また、導入予定である電磁石と過渡吸収装置を組み合わせ、三重項励起子のダイナミクスに対する磁場効果を測定する。これまでに得られた光伝導における磁場効果と過渡吸収の磁場効果を比較し、三重項励起子のキャリアダイナミクスに対する影響をより詳細に議論する。さらに、Photo-CEIV法を用いてキャリアに対するトラップサイトを調べ、超分子ナノ組織体の構造との関連性を考察する。
|