2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07285
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
脇川 祐介 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光伝導 / 超分子自己組織体 / 磁場効果 |
Research Abstract |
本研究の目的は、分子スピントロニクス応用を展望した有機分子薄膜素子における新しい磁気伝導効果の開拓である。分子素子の開発にはキャリア注入と輸送現象に関する基礎的な理解が必要であり、飛行時間型光伝導度測定を用いてキャリアダイナミクスを研究している。本年度は光伝導の温度依存性から、Hexabenzocoronene(HBC)とOligothiophene(OT)超分子自己組織体におけるキャリア動力学を検討した。 外部磁場印加に伴う光伝導の変化である磁気伝導測定から、HBC自己組織体のキャリア生成と輸送に対する熱活性化過程とキャリア輸送を支配するトラップのエネルギー分散を明らかにした。観測された光伝導および磁気伝導の温度依存性に対する速度論的な解析から、キャリア生成における熱活性化過程は光キャリア前駆体であるジェミネート対の電子と正孔に働く7meVのクーロンエネルギーに由来することが分かった。また、キャリア輸送にも20meV程度の熱活性化過程が観測され、多重トラッピングモデルで解析可能であることを示した。キャリアのトラップ密度のエネルギー分散は分布幅の狭い(線幅3meV)ガウス関数で再現され、トラップ準位の深さは10.1meVとなった。得られたラップ準位の深さは一般的な光伝導性を有する有機物に比較して浅く、低次元自己組織体のキャリア輸送性の高さを証明することができた。 OT自己組織体はチオフェン環数を変えることで構造体の次元性を制御することができる。偶数個のチオフェン環を有するOT誘導体は一次元のロッド状構造体形成し、奇数OT誘導体は二次元のテープ状構造体を形成する。観測された光伝導の温度依存性から見積もったトラップ準位の深さはロッド体では約8.6meV、テープ体では約12meVとなった。自己組織体の構造の次元性がトラップ準位の深さと密接に関連していることを明らかにした。キャリア輸送性の制御という観点から、超分子自己組織体の電子デバイス利用への有用性を示すことができた。
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