2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07329
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山中 聡 関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | フランス革命 / 文化 / 宗教 / 「礼拝の自由」 |
Research Abstract |
「研究の目的」及び「研究実施計画」では、パリに滞在し、図書館、文書館での調査に従事することを掲げていたが、入手しようとしていた史料について、問い合わせ続けた結果、その内容は、研究代表者の考える研究とは方向性が異なるものであった。加えて、既に日本で入手していた史料だけで、新しい論文の作成は十分に可能であることが分かったため、本年度は、海外での史料調査は見送ることにした。フランス国立図書館、大英図書館、オーストリア国立図書館等から必要な史料を取り寄せ、あわせて京都大学文学部、法学部に所蔵されている新聞史料、議会の議事録等を参照した。これらの史料を利用して、2011年6月末から10月にかけて論文を執筆し、10月25日に学術誌『西洋史学』(日本西洋史学会)に投稿した。その後、幾度かの手直しを経て、2012年3月21日に同誌への掲載が正式決定した。論文のタイトルは「第2次総裁政府期の立法府による共和暦の再普及と旬日祭典の再編」で、近日刊行される予定である(244号に掲載、2012年4月現在、初校を校正中)。当初の計画とは異なる成果となったが、この論文は、フランス革命の終焉を文化・宗教的な側面から捉えようとしたものであり、学界の研究動向に一定の影響を与えるものであると考える。 次に、藤原書店から2011年9月に、19世紀の歴史家ミシュレの大著『フランス史』の翻訳第6巻が出版された。研究代表者は12章と14章の翻訳を担当した。長らく翻訳が待たれていた『フランス史』が世に出たという点で、大きな意味があると思われる。 加えて書評も掲載した。2010年に刊行された松嶌明男氏著『礼拝の自由とナポレオン-公認宗教体制の成立』山川出版社、2010年」は、傑出した研究書であると同時に、報告者の研究と深い関わりがあるため、書評を『西洋史研究』(東北大学西洋史研究会)に投稿し、査読に通ったものを2011年12月発行の同誌40号に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」で掲げていた海外での史料調査は、予定していた史料の質に問題があり、実行する意味が薄れたため、実現できなかった。そうした意味では、若干の反省が残るが、新たな資料を発見したことで、フランス革命の終焉を理解するという重要な視野に立った論文を執筆し、学術誌への掲載にこぎつけることができた。研究代表者の研究は、そのスケールを一段階大きくすることができた。そうした点で、当初の計画以上に進展しているといってよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題である「テルミドール9日の国家と宗教」が、単なる宗教問題だけでなく、フランス革命の終焉を理解する上でも有効であることが分かった。渡仏し、そこで得た史料を元に論文を執筆するという基本スタイルは、新年度以降も変わらないと思われるが、収集する史料の選定方法には変更の必要が生じた。現在インターネット検索等を通して、利用できる史料を調査中である。また、研究員として活動している期間中に単著の出版を考えているが、その内容にも変更が生じるだろう。構成を検討中である。
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