Research Abstract |
平成24年度は,構築した統計的手法correlated topographic analysis(以下CTA)の研究成果を,国内外の学会にて発表を行い,すべての成果をまとめ,ある学術雑誌に論文を投稿した. まず,CTAについて簡単に述べる.CTAと,従来手法であるsparse符号化(以下SC)や独立成分分析(以下ICA)との最大の違いは,推定される特徴の空間分布にある.具体的には,SCやICAによって推定される特徴間には,順序付けがなされないことが知られているが,一方,CTAによって推定された特徴は,類似した性質をもつ特徴が近傍に集まる傾向にあり,特徴間の順序付けを得ることが出来る. CTAを用いて得られた研究成果について述べる.最初に,人工データを用いて,CTAの性能を調査した.その結果,CTAは,従来手法であるICAやtopographic ICAと比較して,最も良い性能を示すことが分かった.次に,CTAを自然画像に適用し,得られる特徴ならびにその空間分布を調査した.その結果は,推定された個々の特徴とその空間分布は,脳の第一視覚野(以下V1野)の生理学的な実験結果と整合性のある性質を示していることが分かった.また,V1野よりも高次の視覚野における特徴表現ならびに特徴の空間分布を予測,調査するために,V1野の複雑型細胞モデルからの出力を入力データとして,CTAを適用した.long contourやend-stoppingといった興味深い特徴が発現し,類似した性質をもつ特徴は近傍に集まる傾向も見られた.複雑型細胞モデルの出力に対するこうした傾向はこれまで未確認の結果であり,高次視覚野における情報表現に対して,示唆を与える可能性がある.また,CTAの汎用性について調査するために,自然言語処理への応用も行い,非常に興味深い結果が得られていることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の最大の目的は,構築した手法から得られる研究成果をまとめ,国内外の学会での発表,ならびに,学術雑誌に論文を投稿することであった.実際,この目的に沿って,平成24年度は,研究成果を国内外の学会で発表し,すべての研究成果をまとめ,ある学術雑誌に論文を投稿した.したがって,目的はおおむね達成したと考えられ,上のように評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては,次の2点に重点を置き研究を行いたいと考えている. (1)CTAのさらなる拡張. (2)CTAの画像工学への応用. 国際会議ACML2012の予稿でも一部議論しているが,(1)を実現できれば,CTAならびに従来の手法の一般化となる新たな手法を構築できる可能性がある.ただし,パラメータ推定がこれまでの手法に比べ難しく,新たなパラメータ推定法を導入する必要がある.(2)については,画像の物体認識における特徴抽出や画像のノイズ除去への応用などを予定している.
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