2012 Fiscal Year Annual Research Report
湿式合成による酸化亜鉛マイクロチューブの形成機構の解明
Project/Area Number |
11J07593
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 誠司 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC)
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Keywords | 酸化亜鉛 / 層状亜鉛水酸化物 / マイクロチューブ / 湿式合成 / 蛍光材料 |
Research Abstract |
前年度の結果から、前駆体である層状亜鉛水酸化物の溶解再析出機構時の水分量によって、加熱処理後に得られる粒子形態が変化し、特に固体濃度50wt%に調製した試料においてチューブ形状が得られるのが顕微ラマン分光法を用いたその場観察実験によって明らかとなった。そこで本年度は、酸化亜鉛マイクロチューブが形成される条件でのZnイオン濃度変化や得られた粒子の断面観察を行い、チューブ形成メカニズムを考察した。固体濃度50wt%に調製した試料を90℃で加熱した際の加熱時間に対するZnイオン濃度変化を測定したところ、ロッド状粒子が形成する際には緩やかにZnイオン濃度が上昇していくのに対して、チューブ状粒子の場合には加熱時間15分ほどから急激なイオン濃度上昇が確認された。 この急激なイオン濃度の上昇は、前年年度の結果からラマンスペクトルで表面欠陥に起因するピーク(490cm^<-1>)が確認された時間と一致していた。また、得られたロッド状酸化亜鉛粒子の内部構造を観察するために、粒子を樹脂包埋しミクロトームを用いて薄片化し、その断面の二次電子像及び反射電子像を観察した。観察結果から、ロッド状酸化亜鉛粒子の表面は滑らかであったが、内部ではナノサイズの構造欠陥が見られ粗雑な構造であることが分かった。以上の事から、層状亜鉛水酸化物の溶解再析出時のZnイオン濃度により得られる粒子形状が変化することが分かった。当初の目的であった酸化亜鉛マイクロチューブの形成機構としては、層状亜鉛水酸化物の溶解再析出の際に生じる急激なイオン濃度上昇による非平衡状態と、酸化亜鉛の結晶構造上に特徴が要因であることが明らかになった。 また、当初計画していた得られた粒子の蛍光特性を評価したところ、酸化亜鉛マイクロチューブにおいてはロッド状粒子と比較して蛍光強度の増加が確認された。また、酸化亜鉛ロッドの配列構造を作製する事で蛍光特性を有した薄膜の作製に成功した。さらに層状亜鉛水酸化物の構造を利用した添加物を用いない蛍光材料の作製手法も確立出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究の目的である酸化亜鉛マイクロチューブの形成機構の解明を達成できただけでなく、チューブ状以外にもロッド配列構造など溶解再析出を利用した粒子形態制御手法の確立が出来た。また、層状亜鉛水酸化物の結晶構造を利用する事で添加物を用いずに、構造欠陥を利用した蛍光材料の作製にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究成果から、層状亜鉛水酸化物の層間のアニオンの一部を水酸化物イオンと置換する事で構造安定性を制御でき、それにより溶解再析出を利用した粒子形態制御と層状金属化合物の構造欠陥を利用した新たな応用技術が見出せた。今後は酸化亜鉛以外の材料や層状金属化合物についても適用する事で、添加物を用いないソフトプロセスでの機能性材料の合成が可能になると考えられる。
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