2011 Fiscal Year Annual Research Report
炎症による血液脳関門の破綻を転機としたCARASIL病態発症機序の解析
Project/Area Number |
11J07794
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加藤 泰介 新潟大学, 脳研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | HtrA1 / CARASIL / 脳小血管 / 血液脳関門 |
Research Abstract |
High temperatu rerequirement A1 (HtrA1)は遺伝性脳小血管病の一つであるCARASILの原因遺伝子であり、HtrA1遺伝子変異によるプロテアーゼ機能喪失/低下がこの疾患の発症原因であることが推測されている。われわれはHtrA1機能喪失による脳血管への影響を検討する目的で、HtrA1ノックマウス(HtrA1-KOマウス)の脳血管異常を病理学的に解析した。また、脳内でのin situ hybidizationによるHtrA1発現細胞の特定を行った。血管平滑筋細胞変性の解析の結果、20ヵ月齢のHtrA1-KOマウスでは脳軟膜血管上の血管平滑筋細胞マーカーの染色強度と血管壁面積に対する占有比がWTマウスに比して有意に低下していることが示された。一方で、血管平滑員細胞数には差は見られなかった。さらにHtrA1-K0マウスでは通常の血管平滑筋細胞がとる多層構造が失われ、単層構造へと変化していた。また、脳実質内の細小血管ではpericytecoverageの、有意な低下が見られた。 In situ hybridizationによる発現細胞解析の結果HtrA1の発現は血管壁細胞には見られず、脳内グリアの一つであるアストロサイトに発現していることが分かった。 骨形態計測の結果、骨変形を起こしたHtrA1-KOマウスでは著しい骨密度の低下を示していることが分かった。この骨密度の低下は、皮質骨ではなく海綿骨で顕著であった。 脳小血管病には未だに有用な動物モデルが見つかっていないため、遺伝性脳小血管病CARASILの原因遺伝子であるHtrA1ノックアウトマウスで病態が再現されることは、CARASILのメカニズム解明のみならず、孤発性の脳小血管病研究においても大きな進展といえる。HtrA1ノックアウトマウスが孤発性・CARASILの共通主要病態である血管平滑筋細胞の変性を示すことを突き止めた。また、血管平滑筋細胞だけではなく、血液脳関門機能をつかさどる細小血管におけるペリサイトにおいても異常が現れることを見つけ、脳小血管病には血液脳関門の異常が背景にある可能性をモデル動物レベルで示したことは、この分野において非常に大きな発見となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的はHtrA1ノックアウトマウスが実際にCARASIL病態を呈することを証明するであった。実際にHtrA1ノックアウトマウスは血管平滑筋細胞の変性といったCARASILの病理を再現し、有用なCARASILモデルであることを示した。さらに、本モデルはペリサイトの変性を示し、これまで知られていなかった脳細小血管における血管異常を示し、CARASILひいては脳小血管謬尾の背景には血液脳関門の異常が存在する可能性を示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HtrA1ノックアウトマウスの血液脳関門機能に異常が存在するかどうかを、血液成分の脳内への漏出を指標に評価を進める。また、HtrA1はアストロサイトに発現が限局していることが、in situ hybridizationにより明らかとなったため、アストロサイトにおける遺伝子発現変化をマイクロアレイを用いて進める計画である。さらにHtrA1ノックアウトマウスに高血圧・糖尿病といった脳小血管のリスクであることが知られる負荷を加え、反応を詳細に調べることによって、CARASIL病態の背景にどのようなメカニズムが存在するのかを解析していく予定である。
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