2012 Fiscal Year Annual Research Report
重力理論としてのChern-Simons理論の厳密な量子化
Project/Area Number |
11J07868
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 大悟 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子重力理論 / 位相的場の理論 / M5ブレーン / Liouville理論 / 可積分系 / 局所化計算 / ブレーン量子化 |
Research Abstract |
一般相対論と量子論を統合する量子重力理論を完成させる事は現代物理学の重要な問題であるが、我々の住む空間3次元、時間1次元(3+1次元)の時空における量子重力理論の定式化は大変困難である。これに重量な手がかりを与えるモデルとして2+1次元の重力理論がある。2+1次元の重力理論は3+1次元の重力理論と似通った性質を持つが、一方、2+1次元の重力理論は古典的にはChern-Simon理論という位相的場の理論により記述でき、その非摂動的性質がより簡単に調べられると期待される。本研究は、Chern-Simons理論の量子化から2+1次元の量子重力理論を定式化する事を目標としている。 このChern-Simons理論は、2次元のLiouville理論や、3次元の超対称ゲージ理論、4次元の位相的ゲージ理論と対応することが知られており、この背後にはM5ブレーンという6次元の膜の物理がある。近年、様々な次元の場の理論の間に対応が発見されているが、これらはM5ブレーンの有効理論のコンパクト化によって理解できると期待されている。よって、Chern-Simons理論を単体で捉えるのではなく、M5ブレーンを頂点とする様々な場の理論との対応の中に位置づける事で理解することが重要である。 本年度は、Liouville理論の可積分を用いた新たな解析手法を開発した。Liouville理論は2次元の量子重力理論を記述するものとして、古くから研究が行われてきたが、M5ブレーンによる現代的なアプローチにも現れ、本研究を進める上で重要な役割を果たす。また他にも、局所化による厳密な計算や、ブレーン量子化の手法を用いて、Chern-Simons理論に迫る研究も同時に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、量子重力理論を探求するにあたって、新たなアプローチを採用することが望ましいと分かったため、その知識習得と研究に務めた。その結果、論文を執筆することは出来なかったものの、最終的には学会発表を行う事ができた。具体的には、Liouville理論の可積分性を用いた新たな解析手法を開発した。Liouville理論は3次元のChern-Simons理論と深い関わりがあり、研究課題を達成する上で、この成果は重要な進展であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた知識、及び研究の蓄積を踏まえ、来年度は「研究実績の概要」に述べた本年度の研究の完成を目指す。つまり、Chern-Simons理論をM5ブレーンを頂点とする様々な場の理論との対応の中に位置付け、Liouville理論と可積分性、また局所化やブレーン量子化の手法を用いることで、Chern-Simons理論の量子化を厳密に定式化する事を目指す。
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