2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子効果を導入したナノワイヤー熱電変換素子の開発と評価
Project/Area Number |
11J08106
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
村田 正行 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ビスマスナノワイヤー / 量子効果 / 高効率熱電変換材料 / 集束イオンビーム / Shubnikov-de Haas振動 |
Research Abstract |
熱電変換材料にナノワイヤーや超格子等の低次元量子構造を導入することにより、エネルギー変換効率が大幅に向上する可能性が理論的に示されており、本研究ではビスマスナノワイヤーを用いた熱電変換材料の研究を行っている。今年度までに直径80nm以上で長さが1mm以上の石英ガラスに覆われた単結晶ビスマスナノワイヤーの作製を行い、直径160nm以上のサンプルについて測定に成功した。4端子法により抵抗率を評価するために、研磨と集束イオンビームによるナノ加工を利用して石英ガラス中に配置されたナノワイヤー側面へ4ヶ所のナノスケール局所電極の形成を行った。この結果、作製した局所電極がオーミック接合で得られていることを確認し、ビスマスナノワイヤーの4端子法による抵抗測定に成功した。さらに、抵抗率の温度依存性の測定を行ったところ、300Kでの測定結果はバルクビスマスの値と一致したが、低温側ではバルクの値から離れてくる結果が得られた。この温度依存性は、キャリアの平均自由行程がワイヤー直径により制限を受け、移動度が減少する効果を考慮した計算により再現することができた。この結果に関して米国での国際学会(ICT2012)および日本熱電学会にて発表を行い、日本熱電学会講演奨励賞を受賞した。またJournal of Electronic Materialsにて論文として発表した。さらに、移動度の変化を実験的に評価するために、ビスマスナノワイヤーにおけるホール測定を試みている。局所4端子電極を作製した技術を応用し、ビスマスワイヤーの両側面への局所的なホール電極の作製を行った。その結果、作製した電極が電気的導通を得られていることを確認した。また、量子効果の導入によりナノワイヤーの状態密度が一次元化すると、フェルミ準位に変化が生じると予想されることから、Shubnikov-de Haas振動の測定によるフェルミ準位の評価も行ったところ、測定した393nm以上のナノワイヤーにおいてはフェルミ準位の変化は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研磨と集束イオンビーム加工を利用することでビスマスナノワイヤーにおいて4端子測定に成功し、測定結果をモデル計算により再現した。さらに、ビスマスナノワイヤーの移動度を実験的に評価するために、ホール測定用の電極の作製にも成功している。また、並行してShubnikov-de Haas振動の測定を行い、エネルギー構造の評価も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、現在作製に成功している直径80nmのビスマスナノワイヤーの抵抗率・ゼーベック係数の評価を試みる。これまでに集束イオンビーム加工を利用し、ビスマスナノワイヤーにおけるホール測定用電極の形成に成功しており、実際に測定するために必要となる微小電圧測定法等の測定技術の確立を行っていく。また、熱電特性の評価に必要不可欠である熱伝導率の評価を行うために、3ω法による測定法の確立を進めている。並行してモデル計算による熱電特性の直径依存性・結晶方向依存性の評価を行い、ビスマスナノワイヤーの総合的な評価を行う。
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