2011 Fiscal Year Annual Research Report
地域的多様性に対応した水田農業構造改革の展望に関する研究
Project/Area Number |
11J08191
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 邦夫 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生活水準 / 米生産者直販 / 市場構造 / 生産力構造 / 集落営農組織 / 戸別所得補償対策 / 雇用対策 |
Research Abstract |
平成23年度は以下の4つの軸に沿って、研究課題に接近した。 第1は、研究課題への歴史的視点の導入である。我が国における明治時代以降の生活水準の歴史的推移について、先行研究の検討を中心に現代の米穀消費にも通ずる論点の抽出に努めた。また、総務省統計局が発行している『家計調査』(前身は大正15年から実施)の収支項目分類の推移を整理した。以上の検討から、1990年代後半以降の消費量減少の停滞と低価格指向の深化が米穀消費にとって新たな段階への移行であることが明確になった。 第2は、米生産者直販の現局面における性格の解明である。茨城県筑西市への農業実態調査を中心に、90年代後半以前の消費者の高価格志向に対応した高価格・小口での販売から、低価格指向に対応した低価格・大口での販売へと生産者直販の性格が変化していることを明らかにした。また、そのような変化と水田作経営の生産力構造の高度化がパラレルの関係で進んでいることも明らかになった。 第3は、水田農業における組織的経営の展開と経営構造の解明である。家族経営の脆弱化が進行している地域では「集落営農」の展開が従来から活発だが、近年の特徴は家族経営が残存している地域においても交付金支給の対象となるために設立が多いという点である。全国的な状況を昨年に農林水産省が公表した『2010年農林業センサス』を利用して統計的に分析した。 第4は、農業政策の転換に伴う交付金支給体系の変更と農業経営への影響である。民主党政権での戸別所得補償対策は、自民党政権時代の水田・畑作経営所得安定対策と比べて担い手への助成水準が高くなった。また、政策サイドの当初の意図とは異なり、交付金を利用した雇用労働力の導入が進み、現場では雇用対策的な性格を強めている。以上のような状況について、茨城県筑西市及び広島県世羅町への農業実態調査を通じて把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、実態調査が順調に進んでいる。当初から調査を予定していた山形県鶴岡市、茨城県筑西市、広島県世羅町のいずれも調査受入側の対応も丁寧で、資料の収集も進んでいる。 第2に、成果物としての論文の執筆・査読・公刊も順調に進んでいる。23年度だけで査読論文2本の審査が通過し、査読無論文1本が公刊された。 第3に、新機軸である歴史的視点の導入も、受入研究者の加瀬和俊教授の指導の下で徐々に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には23年度と同様に研究を進めていく。 ただし、歴史的視点の導入という点については23年度は先行研究の検討にとどまったことから、統計データの利用等の分析的な作業をより進めていきたい。
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Research Products
(6 results)