2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト身体像を構成する神経表象の解明とミラーニューロンシステム仮説の検証
Project/Area Number |
11J08279
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
小川 健二 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 機能的磁気共鳴画像測定 / fMRI / 脳情報復号化法 / 機械学習 / Sparse Logistic Regression / 到達運動 / 把握運動 / ヒト脳機能 |
Research Abstract |
本年度はまず、核磁気共鳴画像法(fMRI)および脳磁図(MEG)という2つの非侵襲脳機能イメージングを使って、ヒトの身体像を生成する基盤である視覚運動にかかわる脳活動の解読を試みた。 (1)MEGを用いて、視覚座標系と運動座標系を反映する脳活動が分離可能かを検証した。実験では被験者に、指先を使った8方向へのポインティング運動を行なってもらい、実際の指先位置と、指先を示すカーソル位置との間に、90度の回転変換を導入した。結果から、運動開始の前後において、視覚野では視覚座標系での移動方向が、運動関連野では運動座標系での移動方向が正しく推定された。本結果からMEG信号から視覚と運動座標系とを明確に分離できる点が明らかとなった。 (2)身体像を生成する基盤となる内部モデルの解読を、fMRIデコーディング法を用いて行った。実験では協力者に、コンピュータのジョイスティックを用いてスクリーン上でランダムに動くターゲットを追随してもらい、ジョイスティックの運動方向とカーソルの運動方向との間に、プラス90度とマイナス90度という2種類の回転変換を導入した。まず予備実験の結果から、被験者は異なる回転変換を同時に学習可能であることが分かった。そこで運動中の脳活動をfMRIにて計測し、2つの回転条件を識別することが可能かを試みた。結果から、主に補足運動野や両側の一次感覚運動皮質、小脳で,2つの回転条件を行動指標の違いとは独立に識別できることが示された。このことは、ヒトの運動関連野や小脳において複数の運動スキル、あるいは内部モデルが獲得されていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、fMRIとMEGという2つのヒトを対象とした非侵襲脳機能イメージング法を使って、視覚運動や身体像に関わる情報を脳内から抽出することに成功しているため、順調な進捗状況である。特に、空間解像度に優れたfMRIと時間解像度に優れたMEGとを相補的に組み合わせることで、脳機能の詳細な検証が可能になるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度から、ヒトの身体像に関わる多様な情報が、脳機能イメージングとデコーディング技術を使うことで抽出可能な点が明らかとなった。次年度以降はこれらの成果を要素技術とし利用し、ヒトの身体像が動的に生成される脳内メカニズムについて、詳細に解明していく予定である。ただMEGについては、身体運動にともなうアーチファクトの問題が存在するため、この除去を高度な統計的手法を用いることによって行い、解決を行う予定である。
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Research Products
(6 results)