2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代的唯名論の研究-ドイツ・オーストリア学派の観点から
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11J08282
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
秋葉 剛史 埼玉大学, 教養学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分析哲学 / 形而上学 / 存在論 / 唯名論 / ドイツ・オーストリア学派 / 初期現象学派 |
Research Abstract |
本研究の課題である「唯名論を現代的な観点から彫琢し擁護する」という目的の達成に向け、私は平成24年度中に以下のような主題に関する研究を行い、それぞれの成果を発表した。 まず、本研究における中心課題であるトロープ(個別的属性)存在論の擁護に向け、昨年度実質的に完成させていた博士学位論文の内容を整理し直し、公開シンポジウムにおいて口頭発表した。同論文と発表において私は、実在論に対する唯名論の優位を示すための論拠として、「最善のtruthmakerはトロープである」という主張を確立することを目指し、そのために、「最善のtruthmaker」の地位を争う他の候補である「事態state of affairs」、「として対象qua-object」と呼ばれる存在者をトロープと比較する作業を行った。私は、これらの候補と比ベトロープが優れていることを示すため、「一致のパラドクス」、「ブラッドリーの無限後退」、「心的因果の排除論証」といったいくつかの形而上学的問題に注目し、それぞれの論点がトロープの想定にとってどのように有利にはたらくかを具体的に明らかにした。以上の学位論文には、未発表の内容も含まれているため、今後順次単独の論文として改訂し、国内・海外の学術誌に投稿していく予定である。 以上に加えて私は、本研究が彫琢を目指す現代的唯名論の重要な発想源の一人であるF・ブレンターノの存在論的枠組みに改めて注目し、特にその枠組みが知覚の哲学に関してもちうるインパクトを見積もる仕事を行った。この点に関して私が明らかにすることを目指したのは、志向的作用の説明のため「内在的対象」と呼ばれる存在者を措定するブレンターノの枠組みは、センス・データ理論に対してしばしば向けられるある反論に対処するために力を発揮するということである。私はこの研究成果を、コペンハーゲン大学で行われた国際学会で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な達成目標の一つであった、fTruthmaker概念にもとづくトロープ存在論の擁護」という課題を、学位論文の仕上げ作業を通じてかなり進めることができた。また、普遍の問題そのものについても、特に入門書の執筆や翻訳書の作成を通じて理解をさらに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、前年度までの成果に基づき現代的唯名論の精緻化と擁護に努める。とりわけ、形而上学的説明の問題と、因果的過剰決定の問題を中心にこの課題に取り組む。また、学位論文の作成を通じて得た未発表の結果を順次単独の論文として改訂し、国内・海外の学術誌に投稿する。
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