2011 Fiscal Year Annual Research Report
エマルション界面膜を用いた新規な温度応答性粘度材料の創製
Project/Area Number |
11J08379
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊村 くらら 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 界面活性剤 / 両親媒性化合物 / エマルション / ミセル / 刺激応答 / 温度応答 / 粘度 / ゲル |
Research Abstract |
温度などの外部刺激に応答するソフトマテリアルへ高機能性を付与することを期待して、低分子の両親媒性化合物を用いた新規の温度応答性粘度材料の創製を行った。用いた両親媒性化合物は長鎖アミドアミン誘導体C18AAであり、二鎖型の親水基部にアミド基とアミノ基を有する。まず、C18AAは水溶液中で二次元に伸長したミセルを形成することを見出した。この伸長型ミセルではC18AA親水基部のアミド基同士が強く水素結合していることが示された。ミセル溶液は室温下ではミセル長に関わらず極めて低い粘弾性を示し、これは、分子パッキング効果により伸長型ミセルが剛直な形態となり、ミセル同士の絡み合いが起こりにくいためと考えられた。一方で,C18AAミセル溶液の温度を上昇すると、分子間水素結合に部分的な欠陥が生じて、Maxwell流体様の動的なミセル絡み合いによる高粘弾性挙動を示した。この粘弾性転移は、温度に対して極めて鋭敏に応答することから、両親媒性化合物による刺激応答材料の重要なツールとなることが期待される。また、C18AA/トルエン/水の三成分による水中油滴型のエマルションがゲル化することも見出した。水中油滴型のエマルションでは水相にミセルが共存することが知られており、エマルション油滴と伸長型ミセルが互いに三次元ゲルネットワーク構造を形成していると考えた。また、C18AAの油水分配率の温度変化を利用して、温度に応答した粘度転移挙動を検討した。高温では、C18AAの水相分配率が高くなり、連続相中のC18AA濃度が高くなることが示された。これにより、低温ではゾル状態であるエマルションが、高温ではネットワークが成長したゲル状態へ転移することを見出した。さらに、C18AA濃度やpHによってゾル-ゲル転移温度を制御することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温度応答性粘度材料の創製にあたり、構成因子となる両親媒性化合物の伸長型会合体の形成について機構の解明と制御に注力した。当初の計画では高分子などの添加物が会合体延伸に必要と思われたが、使用した両親媒性化合物の強い分子間水素結合が添加物無しでの伸長型会合体形成を可能としたため、高分子添加ではなく水素結合効果を用いた制御手法に変更した。しかし、ミセルおよびエマルション両方で良好な成果が得られ、当初の目的を十分に達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
提唱しているエマルション界面と伸長型ミセルの三次元ネットワークによるゲル化機構は、現在のところ複数の間接的な知見からなる推測である。十分な妥当性を持つものと考えているが、今後はエマルション界面によるゲルの特性を制御することを見越して、視覚的にゲルネットワークを確認することが望まれる。これには、油溶性の蛍光プローブなどを用いたレーザー顕微鏡観察などが有効であると考える。さらに、エマルション構造を変化するなどして、ゲル特性を向上していくことも計画している。これは、ゲルネットワークの架橋点の制御に相当し、主に油滴の微細化が有効であると考えている。しかし、温度応答性材料として用いる場合、エマルションの油滴の大きさの制御は乳化機械力や作製温度などの調製方法の変更のみでは対応が難しい恐れがある。そこで、高分子鎖などの複数の添加物を用いて、エマルションの分散力を高めることも検討していく。
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