2011 Fiscal Year Annual Research Report
迅速な進化を考慮したメタ個体群動態の理論・実験的研究
Project/Area Number |
11J08508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
笠田 実 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 個体群動態 / 進化 / メタ群集 / ケモスタット |
Research Abstract |
平成23年度は個体群動態に影響を与える進化のメカニズムの解明に向けて、ケモスタットを用いた捕食者-被食者系の実験的研究に取り組んだ。具体的には、いくつかの異なる進化的なトレードオフを持つ被食者を用いて、その捕食者との個体群動態、また被食者の進化動態を観察した。その結果、従来は理論的な予測のみが存在しなかった進化と個体群動態のフィードバック相互作用について、実証的なデータと新たな知見が得られた。本研究で得られたデータから、実際に進化が個体群動態に影響を与えていることが示唆された。実際に異なる進化的なトレードオフは異なる進化動態と個体群動態を引き起こしていた。しかし、進化と個体群動態のフィードバック相互作用は、当初考えられていたより遥かに複雑であることが同時に明らかになった。それだけでなく、進化的なトレードオフの関係がもたらす双安定性の存在など、従来あまり考えられてこなかった新たな進化と個体群動態の相互作用の側面についても新たな知見が得られた。これらの結果をYamamichi et al.(2011)など最新の理論研究と併せることによって、今後更なる進展が望めると考えられる。また、本研究の結果は、個体群動態の研究における、生態学的な相互作用のみを考えるアプローチの限界を示唆しており、生態と進化双方を考慮した理論研究を構築していく上での1つの枠組みを提示している。よって、eco-evolutionary dynamicsのフロンティアとしても本研究は重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年次計画においては平成23年度は進化が個体群動態にどのようなメカニズムで影響を与えるのかということに関して論文を作成し、投稿する予定であった。実験自体は当初の計画通り遂行できたものの、理論予測よりも遥かに複雑な実験結果を得られたため、他のいくつかの新しい理論を検討するため、未だ論文投稿までには至れなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はここまでの実験結果を新しい理論研究とともにまとめ、論文を投稿する。また、ここまで得られた知見を基に現在行っている個体群動態の研究をメタ群集にまで理論的に拡張する。現在のところやや遅れはあるが、今後も申請した年次計画に則って研究を遂行していく。
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Research Products
(3 results)