2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュを用いた高分解能生体イメージングによる血管と癌細胞に関する研究
Project/Area Number |
11J08596
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Research Fellow |
金田 雅充 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 血管外浸潤 / 転移 / がん / ゼブラフィッシュ / 血管新生 / GFP / 生体イメージング / VEGF |
Research Abstract |
ゼブラフィッシュ稚魚の血管内にがん細胞をマイクロインジェクトし、新規の「ゼブラフィッシュ血行性がん転移モデルの生体イメージングシステム」を確立した。血管内皮細胞で選択的にGFPを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュの血管内へ、RFPを発現したヒト咽頭がん細胞を移入したところ、血管内に移入されたがん細胞はすぐに塞栓を形成した。その後、塞栓を形成したがん細胞は、免疫細胞のように個々の細胞ごとに浸潤するのではなく、細胞塊のまま集団で血管外組織へ移動・生着することを見出した。そのような血管外浸潤過程を蛍光2色長時間タイムラプス撮影により観察・解析することで、がん細胞の血管外浸潤が「がん細胞のinvasion」と「血管内皮細胞によるがん細胞の囲い込み」の2つの過程により起こることを明らかにした。 また、がん治療において現在問題視されている血管新生阻害薬による転移性亢進という矛盾した現象に対し、本モデルシステムを応用することにより、そのメカニズム解明のヒントとなる興味深い結果を得ることができた。血管新生阻害薬は、がん組織による血管新生の誘導を抑え、酸素や栄養を届けさせなくする薬であるが、本研究ではVEGFの発現抑制や血管新生阻害薬sunitinibの投与により、がん細胞自体の極性や運動性が失われることを明らかにした。さらに、生体イメージングにより、それらのがん細胞の血管外浸潤を調べたところ、がん細胞の運動性低下によりinvasionタイプの浸潤が完全に阻害されることがわかった。しかし、驚くべきことに血管内皮細胞によるがん細胞の囲い込みタイプの浸潤に対しては、がん細胞のVEGF発現抑制による阻害効果はみとめられず、sunitinib存在下においてはむしろ促進されてしまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初の計画を大きく上回る速さで順調に展開できており、すでに、これまでの研究成果はまとめて国際学術雑誌へ投稿中である。また、3年度目に計画していた癌モデルマウスによる検証のための実験をすでに開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では3年度目に予定していたが、ゼブラフィッシュの血行性癌転移モデルでこれまで明らかにしてきた現象が、哺乳動物にも保存されていることを明らかにするための研究を現在進めている。新たなメカニズム解明を目指し、マウスを用いた生体イメージング技術は必要不可欠だと考えているが、その手法開発は世界的にも未だ手探りの状況である。本年度から、斬新な生体イメージング手法を開発しながら研究を展開させるため、米国スタンフォード大学の研究室への留学を計画している。
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Research Products
(4 results)