2012 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュを用いた高分解能生体イメージングによる血管と癌細胞に関する研究
Project/Area Number |
11J08596
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Research Fellow |
金田 雅充 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2011 – 2013-03-31
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Keywords | 血管外浸潤 / 転移 / がん / ゼブラフィッシュ / 血管新生 / GFP / 生体イメージング / VEGF |
Research Abstract |
昨年度の成果として、ゼブラフィッシュ稚魚の血管内にがん細胞をマイクロインジェクトし、新規の「ゼブラフィッシュ血行性がん転移モデルの生体イメージングシステム」を確立した。血管内皮細胞で選択的にGFPを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュの血管内へ、RFPを発現したヒト咽頭がん細胞を移入したところ、血管内に移入されたがん綿胞はすぐに塞栓を形成した。その後、塞栓を形成したがん細胞は、免疫細胞のように個々の細胞ごとに浸潤するのではなく、細胞塊のまま集団で血管外組織へ移動・生着することを見出した。そのような血管外浸潤過程を蛍光2色長時間タイムラプス撮影により観察・解析することで、がん細胞の血管外浸潤が「がん細胞のinvasion」と「血管内皮細胞によるがん細胞の囲い込み」の2つの過程により起こることを明らかにした(論文投稿中)。 本年度は、ゼブラフィッシュモデルで発見した現象が、哺乳類動物においても保存された現象であるか否かを調べるため、マウス乳がん細胞株(4T1)を免疫不全マウスの尾静脈から移入し、肺転移モデルマウスを構築した。血管内皮細胞マーカー(CD31,VE-cadherin)に対する抗体を用いて免疫染色を行い、肺で塞栓を形成した4T1細胞と血管内皮細胞の分布を解析した。興味深いことに、細胞移入24時間後には、血管壁へ接着した4T1細胞群の表面を血管内皮細胞が覆うように広がっていることを確認した。 また、並行して生体イメージングに向けた基礎データの採取も行ってきた。これまでに、マウス生体内における癌細胞の運動を数時間安定的に観察することに成功しているが、原発巣から離れた転移先における癌細胞や腫瘍微小環境のイメージングを可能にするためには多くの課題を残している。これらの課題を解決し、転移先における生体イメージングを行うため、渡米後は転移巣の形成領域を制御する手法の開発を進めており、まもなく動物実験を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は順調に展開し、これまでの研究成果は、国際学術雑誌Pros Oneへ投稿し、現在、revisionのためのデータ採取を行っており、まもなく受理されるものと思われる。また、3年度目に計画していた癌モデルマウスによる検証のための実験をすでに開始し、蛍光試薬および蛍光タンパク質により標識したがん細胞を用いて肺転移モデルマウスを構築した。血管内皮細胞マーカーを免疫染色し、哺乳類動物にも「血管内皮細胞によるがん細胞の囲い込み」タイプの血管外浸潤過程が保存されている可能性を示唆する結果を得た。 また、転移巣の生体イメージングに向けて、観察手法・領域・時期などについて基礎条件の評価を行ってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
癌転移における新たなメカニズム解明を目指し、マウスを用いた生体イメージング技術は必要不可欠だと考えているが、その手法開発は世界的にも未だ手探りの状況である。本年度から、斬新な生体イメージング手法を開発しながら研究を展開させるため、米国スタンフォード大学の研究室へ留学中である。マウス体内における癌転移プロセスをイメージングするためのアプローチとして、目的の箇所で転移巣形成を誘導するという新規技術の開発に取り組んでいる。この技術を生体イメージングに応用し、マウス体内における転移プロセスのイメージングを可能にしたい。
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Research Products
(1 results)