2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J08599
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
諌川 輝之 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 状況 / 情報 / 経路選択 / 避難行動 / 意思決定 / 東日本大震災 |
Research Abstract |
本研究は、様々な制約条件のもとで空間が人間の移動行動を動機づけるシステムについて、体系化を行なうことを目指している。東日本大震災の影響により実施計画を一部見直し、今年度は以下の2つの柱で研究を行なった。 (1)様々な状況における経路選択傾向の把握のためのシミュレーション実験 移動の動機づけられ方の差異がもっとも明確に表れると考えられる、分岐点における経路の選択行動を再現した視覚シミュレーション実験の結果をもとに、分析を行なった。本実験では、制約条件の強さが異なる「散策」、「目的遂行」、「避難」の具体的状況を被験者に与えて実空間で撮影した街路の映像を提示し、それぞれ経路選択および判断の理由等を得ている。その結果、経路選択傾向は状況によって大きく異なることが確かめられた。また、選択に利用される視覚情報を詳しく分析し、歩行者が環境に求める情報、および環境から得る情報を状況ごとに抽出した。さらに、選択に際して同じ手がかりを用いても、そこから取り出される情報は多様であることが示唆された。 (2)緊急時の避難行動を動機づける要因に関する調査 緊急時に環境から得られる情報と行動との関係を明らかにするために、2011年3月11日に発生した東日本大震災発生時の人々の行動をとりあげることにした。具体的には、津波が来襲した沿岸地域の住民を対象に、発震直後の避難意思決定および避難した場所とそこまでの経路選択等に関するアンケート調査を実施し、人々の判断に標高や海岸からの距離、経路の物理的特徴、および行政等による避難の呼びかけや他者の行動などの情報がどのように影響したのかを検討している。得られた当日の詳細な行動データをもとに、住民行動の概要として、(1)避難にとどまらない多様な行動(立ち寄り等)が発生していること、(2)地震発生時にいた場所によってその後の行動パターンが大きく異なることなどの傾向を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災が発生したことにより、当初計画を見直して上記(2)で示した緊急時の避難行動に関する調査・分析を優先して実施したものの、(1)も同時並行的に進めており、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
緊急時の避難行動について、得られたデータの分析を進めるとともに追加の調査を行なって、空間の構造と避難・移動行動との関係を考察する。そして、その成果を国際学会で発表し、論文にまとめる。 また、様々な状況における経路選択の場面で用いられた環境情報を記述し、CG映像を用いて物理的環境を操作し、影響要因の検証を行っていく予定である。
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