2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J08726
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外岡 大志 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脂質二重膜 / マイクロチャンバ / MEMS / リポソーム |
Research Abstract |
本研究の目的は、特定の分子を認識し、内包する物質を放出する機能性リポソームを作製することである。この機能性リポソームは、生体の放出する特定の小分子を特異的に認識し、その物質を認識したときにだけリポソームの中に封入された物質(例えば薬剤)をリポソームの外に放出するという、直径数百nmの機能を持ったリポソームである。これまでのリポソームになかった、分子に応答する機能を付加することにより、これまでのpH感受性や温度感受性、光感受性のリポソームと比べて、高精度の制御が可能となるため、より効率の良いドラッグデリバリシステムとしての応用が期待される。本年度は、まず、リポソームと同様の材料から成る脂質二重膜で囲まれたマイクロチャンバをガラス基板上に構築した。具体的には、過去に当研究室で考案された容易に脂質二重膜を形成する方法(接触法)と当研究室の基盤技術であるマイクロマシニングを組み合わせることで、これまで比較的困難であった蛍光検出による脂質二重膜を介した反応の解析が容易に行えるようになった。この脂質二重膜マイクロチャンバは、そのチャンバの小ささゆえに、チャンバ内の物質の濃度変化をリアルタイムで高感度に検出可能である。また、リポソームは均一の径のものを作製することは非常に困難であるが、本研究で開発された脂質二重膜マイクロチャンバは均一径のチャンバの作製が容易である。さらに、本研究で開発された脂質二重膜マイクロチャンバは基板に固定されているため、観察が容易となる。従って、リポソームと同様の材料でできた脂質二重膜マイクロチャンバに様々な物質を付加し、その系を定量的に解析することで、本研究の目的である機能性リポソームの作製に向けた定量的なデータを得ることが可能だと考えられる。また、この脂質二重膜マイクロチャンバは、本研究においてのみならず、脂質二重膜を用いる研究に広く応用することができるため、今年度の研究成果の意義は大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、脂質二重膜マイクロチャンバデバイスを作製した。この脂質二重膜マイクロチャンバは、目的のリポソームを作製するための基礎的なデータを定量的に解析可能であるため、今後の研究を進める上で重要な部分を一つ解決したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はまず、脂質膜チャンバに膜タンパク質(脂質膜に小分子の通り道を作る)やDNAアプタマ(小分子センサ)やその他のDNA分子(演算回路)を封入し、DNAアプタマを用いた小分子センサがうまく小分子をセンシングできることを実証する。また、本研究以外でもDNAアプタマを用いたセンサを利用できるよう、DNAアプタマを用いた小分子センサの設計方法を導き出す。DNAアプタマを用いた小分子センサの実証試験と並行して、DNAを用いたリポソームの融合実験も行う。具体的には、今年度作製した脂質膜マイクロチャンバの脂質膜にDNAを結合し、チャンバ内に脂質膜に結合したDNAと相補となるDNAを結合したリポソームを封入し、DNAの相補鎖形成の際に生じる力によってリポソームがマイクロチャンバ上の脂質二重膜と融合することを実証する。また、本研究以外でもDNAによるリポソーム融合技術を利用できるよう、DNAによる平面脂質二重膜へのリポソーム融合の設計方法を導き出す。最終年度に脂質膜マイクロチャンバをリポソームに置き換え、目的のリポソームを作製する。
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