2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J08726
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外岡 大志 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脂質二重膜 / マイクロチャンバ / MEMS / リポソーム |
Research Abstract |
本研究の目的は、特定の分子を認識し、内包する物質を放出する機能性リボソームを作製することである。これまでのリボソームになかった、分子に応答する機能を付加することにより、これまでのpH感受性や温度感受性、光感受性のリボソームと比べて、高精度の制御が可能となるため、より効率の良いドラッグデリバリシステムとしての応用が期待される。前年度は、本研究の目的である機能性リボソームの作製に向け、リボソーム内にどのような物質を封入すべきかなどの定量的なデータを得るために、リボソーム内に様々な物質を封入可能で、かつ高感度に容易にリボソーム内の現象を観察可能なシステムを構築した。具体的には、リボソームと同様の材料から成る脂質二重膜で囲まれた微小な空間(脂質二重膜マイクロチャンバ)をガラス基板上に構築した。今年度は、本研究において開発された方法により作製した、脂質二重膜マイクロチャンバを用いて、ヘモリシンと呼ばれる膜タンパク質を実際に脂質二重膜中に埋め込み、その膜タンパク質の物質輸送機能を蛍光検出により計測した。膜タンパク質は、生体内では細胞内外の物質輸送や情報伝達を一手に担う大変重要な物質であり、本研究の目的である機能性リポソームにおいて特定の分子を認識するようなセンサの役割をする物質となることが期待されている。脂質二重膜チャンバを用いて容易に高感度な膜タンパク質の計測が可能であることが確認できた。開発した脂質二重膜マイクロチャンバは、本研究においてのみならず、脂質二重膜を用いる研究に広く応用することができる。さらに、人工脂質二重膜を用いて蛍光により膜タンパク質の輸送機能を計測することは一般に極めて困難なため、今年度の研究成果は膜タンパク質計測方法としても意義は大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、開発した脂質二重膜マイクロチャンバを用いて、膜タンパク質の機能を計測可能な系を構築した。膜タンパク質は、目的のリボソームを作製する際の小分子認識センサの役割を期待されている物質である。その膜タンパク質の機能を蛍光により可視化することに成功したので、今後の研究を進める上で重要な部分を一つ解決したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はまず、DNAアプタマ(小分子センサ)やその他のDNA分子(演算回路)を封入し、DNAアプタマを用いた小分子センサがうまく小分子をセンシングしその情報をDNAの演算に利用できることを実証する。DNAアプタマを用いた小分子センサの実証試験と並行して、DNAを用いたリボソームの融合実験も行う。具体的には、今年度作製した脂質膜マイクロチャンバの脂質膜にDNAを結合し、チャンバ内に脂質膜に結合したDNAと相補となるDNAを結合したリポソームを封入し、DNAの相補鎖形成の際に生じる力によってリボソームがマイクロチャンバ上の脂質二重膜と融合することを実証する。また、本研究以外でもDNAによるリボソーム融合技術を利用できるよう、DNAによる平面脂質二重膜へのリボソーム融合の設計方法を導き出す。最終的に脂質膜マイクロチャンバをリボソームに置き換え、目的のリボソームを作製する。
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