2012 Fiscal Year Annual Research Report
立体構造情報に基づいた網羅的タンパク質間相互作用予測システムの開発
Project/Area Number |
11J08750
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大上 雅史 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | バイオインフォマティクス / タンパク質間相互作用予測 / タンパク質ドッキング / アポトーシス / ハイパフォーマンスコンピューティング |
Research Abstract |
タンパク質の生体内相互作用ネットワークは,病因の理解や創薬ターゲット決定に重要であるが,大規模ネットワークを実験的に導くことは多大なコストを要するため,計算機によって大規模なネットワークを予測する技術が求められている.本研究は公共データベースに登録されたタンパク質の立体構造情報を利用して,複合体形成を擬似的に行うタンパク質ドッキング計算によってタンパク質の相互作用の有無を高速に予測することを目標としており,本年度は相互作用予測精度の向上のための新たな数理モデルを提案した.具体的には,粗視化されたタンパク質構造において,形状相補性と静電的相互作用,疎水性相互作用の3つの効果を取り込んだエネルギースコア計算モデルを開発した.この計算モデルは,従来の類似のモデルに比べ,Averaged Atomic Contact Energyと呼ばれる非ペアワイズ型の統計ポテンシャルを用いることで相関関数の計算を大幅に削減し,これにより計算の高速性を維持しつつタンパク質ドッキング計算の精度を向上させることに成功した.また,当該予測システムを細菌走化性パスウェイ中のタンパク質群(13種)と,ヒトアポトーシスパスウェイ中のタンパク質群(57種)に適用し,その精度を確認した.アポトーシスパスウェイについては,既知複合体立体構造を雛型として用いる手法とも結果を比較し,予測内容の性質を検討した.アポトーシスパスウェイはガンや神経変性疾患などの各種疾病に関わっており,本研究による予測結果を活用することは,それら疾病への理解を促進させるものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度での課題であった相互作用予測の精度について,新たな計算モデルの提案により計算時間の増加を伴うことなく精度向上を実現することができ,今後の研究計画において様々な実問題への応用可能性が広がった.その一例として本年度では新たに細胞死に関わるパスウェイへの適用を実施した.今後さまざまなパスウェイへの応用が容易に行える環境が整い,研究はおおむね順調に進展しているものと評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今後,タンパク質間相互作用予測のネットワーク予測への応用とその予測結果の公開が肝要であると考える.EGFRシグナル伝達パスウェイなど関連遺伝子が多く存在する大規模パスウェイに対しての予測を行い,その結果をWebから利用可能なデータベースなどの形で公開する.
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