2011 Fiscal Year Annual Research Report
軟骨形成を促進するバテライト含有ポリ乳酸系ハイブリッドビーズの設計
Project/Area Number |
11J08842
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 仁 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ケイ酸イオン / カルシウムイオン / 徐放 / シロキサン / バテライト / 非晶質炭酸カルシウム |
Research Abstract |
ケイ酸・カルシウムイオン徐放型の軟骨修復材料の作製と、その基礎となる科学を明らかにすることをめざし、イオン徐放担体であるシロキサン含有バテライト(SiV)粒子の構造解析を行った。また、粒子の化学耐久性制御をめざし、テトラエトキシシラン(TEOS)、ポリ乳酸(PLA)をSiVに添加した際の構造、および溶解挙動を評価した。 1.SiVの構造解析:赤外分光分析(FT-IR)より、SiV粒子はSi源であるアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)由来のシロキサン、バテライトに加え、非晶質炭酸カルシウム相(ACC)が存在することを明らかにした。またTris緩衝液(pH7.4)中に浸漬した際、シロキサンおよびACCが先に溶解し、その間、バテライトの溶解が顕著に遅延する傾向が見られた。SiVはバテライト核をACC、シロキサンが被覆した一次粒子で構成されると考えられる。 2.TEOS添加SiV:APTESを段階的にTEOSへと置換(最大50%)し、SiVを合成した。APTES比率の減少に伴いACCが顕著に減少した。Tris緩衝溶液中では、APTES比率の減少に伴い粒子中の炭酸カルシウム相の溶解(カルサイトへの溶解再析出)が促進された。このことより、アミノ基を有するシロキサンは炭酸カルシウムと複合化し、溶解を遅延させる一方、TEOSシロキサンは溶解挙動にほぼ影響しないことが分かった。 3.PLA添加SiV:PLAを~20wt%含有したSiVについて評価した。FT-IRより、含有されたPLAのカルボキシ基に由来するピークがPLA単体に比べ高波数側にシフトしており、PLAが分子レベルでシロキサン、バテライトと複合し、分子鎖間の水素結合が抑制されている可能性が示唆された。緩衝溶液中において、通常のSiVより早期にCa^<2+>イオンの溶出が見られた。PLAのカルボキシ基は水溶液中にて酸性を示し、粒子中のバテライトの溶解を促進した可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究予定項目であったシロキサン含有バテライト粒子の構造解析について十分な知見を得ると共に、次年度以降で予定していた粒子の化学耐久性の制御に関しても着手することができ、期待以上の大きな進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.連合王国Imperial College LondonのDr. Julian R. Jonesのグループにてポリグルタミン酸とシロキサン含有バテライトとのハイブリッド化研究に着手し、ケイ酸およびカルシウムイオンの徐放性制御手法について検討する。(2012年1月22日~2013年1月15日) 2.帰国後、上記複合体について軟骨細胞を用いた細胞実験を行う。これにより、シリコンイオン種、およびカルシウムイオンが、軟骨細胞の増殖・分化に及ぼす影響を検討する。
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