2012 Fiscal Year Annual Research Report
軟骨形成を促進するバテライト含有ポリ乳酸系ハイブリッドビーズの設計
Project/Area Number |
11J08842
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 仁 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ケイ酸イオン / カルシウムイオン / 徐放 / シロキサン / パテライト / 非晶質炭酸カルシウム / γ-ポリグルタミン酸カルシウム |
Research Abstract |
シリコンイオン種・カルシウムイオン徐放型の軟骨修復材料の作製と、その基礎となる科学を明らかにすることをめざし、(1)英国Imperial College Londonでの派遣研究に着手し、シリカおよびγ-ポリグルタミン酸カルシウムからなるハイブリッドハイドロゲルの溶解性制御に関する研究に着手した。また、(2)上記イオンの徐放担体であるシロキサン含有バテライト(Siv)粒子の合成時における貧溶媒添加の影響について調査を行った。 1.γ-PGA/シリカハイブリッドハイドロゲルの溶解挙動:ポリグルタミン酸カルシウム(CaPGA)をグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)により架橋し、ハイブリッド体を作製した。赤外分光分析(FT-IR)より、CaPGA/GPTMS間に生成したエステル結合由来のC=O、PGA側鎖にCa^<2+>イオンが配位し生成したCOO^-、GPTMSの縮合に伴うSi-O-Si結合に起因するバンドが見られた。この試料をジメチルカーボネート共存下にて合成した際、GPTMSとの反応に伴い新たなCO^-グループを生成した。Tris緩衝液(pH7.4)中に浸漬した際、これらの試料ではより緩やかにCa^<2+>イオンが溶出することを見出した。 2.合成溶媒の変化がシロキサン含有バテライト粒子の化学耐久性に及ぼす影響:炭酸ガス化合法でのSiV粒子合成の際、溶媒のメタノールを段階的にアセトンへと置換(最大50vol.%)した。その際、粒子中に含まれるバテライトのc面への配向性が向上する傾向が見られた。同時に、粒子中の非晶質炭酸カルシウム相が減少する傾向が見られた。また、すべての試料で約70mo1%のT^2、および約30mol%のT^3構造からなるシロキサンが含有されていた。 Tris緩衝溶液中では、このc面配向性の向上に伴い浸漬初期30minでのカルシウムイオン溶出量が徐々に減少することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度はImperial Colege Londonでの1年間の派遣研究に参加し、軟骨再生用生体材料という主テーマのもとに、当初の研究予定にはない新たな高分子・無機ハイブリッド材料の研究を自ら計画、進行させ、異なるイオン溶出性を持った柔軟なハイドロゲル材料の作製に至った。また、前年度の研究項目であったシロキサン含有バテライト粒子の構造解析で得られた知見から、粒子中の炭酸カルシウムの安定化機構を考察し、さらに合成条件の制御による化学耐久性のことなる粒子の作製まで研究を発展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の項目について取り組む。 1.化学耐久性の異なるSiV粒子を用いてSiv/PLA複合体ビーズを作製し、ビーズのイオン溶出量の制御を行う。 2.SiV粒子の溶出物の共存下、およびSiv/PLA複合体ビーズ上で間葉系幹細胞を用いた細胞試験を行う。この際、シリコンイオン種、カルシウムイオンが軟骨細胞の分化挙動に及ぼす影響について評価する。 3.本年度に得た知見をもとに、注入型生体材料への応用をめざした50~100μmの直径を有するビーズ状のγ-PG/Vシリカハイブリッド体の作製を試みる。
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