2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の映像・図像メディアにおける恐怖と身体の表象についての重層的研究
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11J09036
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
川崎 公平 明治学院大学, 文学・言語文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本映画 / マンガ / ホラー・怪奇 / 戦後日本文化 / メディアと身体 / 映像論 / 恐怖表現 |
Research Abstract |
本研究は、戦後日本の視覚メディアにおけるホラー作品を分析対象とし、それぞれのメディア特性と恐怖表現が関わることによって現れる身体性の諸相、および<メディア-身体-ホラー>の重層的な関係の系譜を明らかにすることを目的とする。初年度である平成23年度においては、対象を終戦から60年代にかけての映画とマンガに限定し、とりわけ50年代の新東宝の怪奇映画、および楳図かずおと水木しげるの貸本劇画についての調査をおこなった。その作品群の収集・閲覧と、周辺状況に関する資料調査をおこなうとともに、各メディアや身体性に関する理論的・思想的な整理を進めた。その結果、重要な視点としておもに以下の二点が得られ、それにもとづく分析をおこなった。(i)恐怖ジャンルと「運命」との関わり。 「運命」という観念は、怪奇やホラーのドラマに深く関わるとともに、戦時中から戦後にかけて様々な文脈で用いられてきたものでもある。楳図や水木のマンガ、あるいは同時代の種々の文学作品や思想なども視野に入れつつ、戦後日本における「運命」と恐怖表象との結節点を探り、そこに現れる人間や身体のありようを明らかにした。(2)この時期の怪談映画に見られる類似にもとづく入れ替わりの問題。とりわけ中川信夫監督の『憲兵と幽霊』を題材にしながら、単純な視覚的転換の過剰なまでの展開によって、それが戦時下の権力構造や戦後の言説空間を攪乱させうるような、ひとつの創造的な実践たりえていることを解明した。これらはいずれも、<メディア-身体-ホラー>が重層する場に着目することによって、戦後日本文化に現れる創造性と政治性の様態を新たな視点から明らかにするものである。この二つの観点からの成果はまずひとつにまとめられ、日本近代文学会全国大会で口頭発表された。そしてそれをもとに、それぞれの問題をテーマとする論文が執筆・投稿される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
終戦から1960年代にかけてのホラー作品について包括的に調査することができ、またそこから、戦後日本の<メディア-身体-ホラー>に関する重要な視点を獲得し、それらが重層する場に現れる創造的な実践の様態を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、1960年代後半から90年代へと至る戦後日本のホラー作品の調査・分析を進め、<メディア-身体-ホラー>の重層的な関係と、そこに現れる創造的実践の系譜を編むことを目指す。同時に、それに関わるメディア論的・身体論的なモデルの構築に向けた理論的な研究により本格的に取り組みたい。また、海外での口頭発表や英語での論文発表も視野に入れながら、研究成果をこれまで以上に積極的に発表していく予定である。
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Research Products
(2 results)