2011 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体型ATP合成酵素の活性制御を分子レベルで理解する
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11J09051
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
砂村 栄一郎 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ATP合成酵素 / 活性調節 / シアノバクテリア |
Research Abstract |
葉緑体型ATP合成酵素の活性制御機構を解明するために、シアノバクテリアATP合成酵素を用いて、X線結晶構造解析を行っている。当研究室で構築したATP合成酵素のα_3β_3γε複合体の発現系を利用し、市販のスクリーニングキットを用いて、結晶化の初期スクリーニングを行った。しかし、タンパク質の結晶を得ることができなかったので、発現系の改良を行った。具体的には、Hisタグの除去、夾雑のプロテアーゼによって切断される部位に変異導入を行った。改良した発現系を用いて、結晶化の初期スクリーニングを行ったところ、4つの条件で結晶を得ることができた。続いて、より大きく良質な結晶を得るために、結晶化条件を最適化した。最適化した条件で作製した結晶を用いて、実験室レベルの回折実験を行ったところ、もっともよい分解能を与える結晶で6.5A程度であった。 並行して、この酵素を構成するγサブユニットにあるN末端およびC末端のαヘリックスのコイルドコイル構造が活性制御に重要な役割を果たしているのではないかと考え、αヘリックスにCysを導入し、S-S架橋をかける実験を行った。S-S架橋することにより、αヘリックス間の相対的な位置を変化させることができると考えた。架橋をすることで、酵素活性が大きく上昇する変異体があった。また、阻害サブユニットであるεに対する挙動にも変化があった。S-S架橋をする前は、100%近い阻害率であったが、架橋をすることで、40%近くまで阻害率が減少する変異体が得られた。N末端およびC末端のαヘリックス間の相対的な位置関係が、活性の制御に重要な役割を果たすことを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶構造解析については、分解能の低い結晶しか得られていないが、結晶はできているので、調製している精製標品は単分散で良質のものと考えられる。結晶の厚みが薄く、放射光施設で回折実験を行わないと良し悪しが判断できない結晶もあるので、放射光施設で回折実験を行う。 S-S架橋の実験では、必要な結果を一通りそろえることができているので、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶構造解析については、分解能の低い結晶に分解能を向上させる操作(脱水操作)を行うことで構造解析可能になる例が報告されているので、この操作を試みる。また、αサブユニットのN末端にある、結晶化を妨げる可能性のある余分なアミノ酸配列を切断することで、分解能が向上するのではないかと考え、これも試みる。これらの結晶を用いて、放射光施設で回折実験を行う。 S-S架橋の実験に関しては、投稿論文を準備中である。
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Research Products
(2 results)