2011 Fiscal Year Annual Research Report
樹状細胞に発現するトランスポーターを標的とした抗アレルギー薬の開発
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11J09152
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
保嶋 智也 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トランスポーター / 蛍光物質 / アレルギー / 硫酸抱合体 / ステロイド |
Research Abstract |
先進国諸国においては、アレルギー疾患は増加の一途をたどり、今や日本人の約30%が何らかのアレルギー疾患を有していることが指摘されている。現在その治療には、主に化学伝達物質の放出抑制や抗ヒスタミン剤が用いられるが、これらは対症療法にすぎないため、根本的な治療方法の確立が望まれている。 そこで、免疫反応に重要な役割を果たしている樹状細胞に注目し、その制御因子である低分子化合物の輸送に焦点あてた。樹状細胞のESTデータベースより、機能未知のトランスポーター様蛋白をコードするcDNAsを同定し、それらの遺伝子クローニング及び発現系を用いて様々な蛍光性物質の取り込みを検討した。その結果、5-aminofluorecein1(5-AF)を輸送するものと、sulforhodamine B(SR-B)を輸送する新規トランスポーターを2つ同定することに成功した。 5-AFを輸送する新規トランスポーターは、小胞器官であることを明らかになったことから、本遺伝子産物をvesicular organic anion transporter1(VOAT1)と命名することにした。5-AFは天然には存在しない人工化合物であるため、生理的輸送基質の探索を行ったが、未だ輸送されるものを見出せていなく、VOAT1の生理的役割は不明のままである。 一方、SR-Bを輸送する新規トランスポーターに関しては、estrone sulfateを輸送することから、本遺伝子産物をsteroid sulfate transporter1(SST1)と命名することにした。また、その局在を調べてみると小胞体に分布していることから、SST1は小胞体に局在するステロイドの脱硫酸抱合化酵素(steroidalsulfatase)と共に機能し、生体内のステロイドホルモン濃度の制御に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で、機能未知トランスポーターを2つ同定することが出来た。VOAT1に関しては生体内基質を決定するに至っていないが、SST1に関しては、生体内での役割に関して相当程度解析が進んだとみている。
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Strategy for Future Research Activity |
SST1は生体内のステロイドを制御している可能性があることから、創薬のターゲットになる可能性を十分に秘めている。たとえば、女性の罹患率が非常に高い乳癌は、エストロゲンなどの女性ホルモンの過剰産生により発症することが知られている。このSST1の輸送系をブロックするような医薬品を開発することが出来れば、乳癌に対する新たな抗癌ターゲットになることが予想される。しかし、現在SST1の輸送機能は排出方向にしか見ることが出来ず、SST1の輸送系を阻害するような化合物の探索は困難である。そこで、今後はSST1の簡便な機能評価系の確立に取り組んでいく予定である。
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