2012 Fiscal Year Annual Research Report
MOSトランジスタの高移動度化とバリスティック極限における電子輸送特性の研究
Project/Area Number |
11J09172
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 綱己 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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Keywords | MOSトランジスタ / 自己加熱効果 / FinFET / アナログ特性 / 熱輸送 / キャリア輸送 |
Research Abstract |
本研究では,半導体電子デバイスの微細化によって顕在化する現象を解明し,次世代電子デバイスの設計指針を示すことを目的としている。本年度は,前年度に行っていた微細素子の熱解析を更に発展させ,発熱が現実のLSI動作に与える影響の解明に取り組んだ。先行研究では,素子の発熱は主に動作温度や電流の劣化によって評価されており,実際の回路動作特性への影響は十分調べられていなかった。本研究ではアナログ回路動作解析と熱解析を同時に行い,発熱の効果でアナログ特性が劣化することを示した。さらに,素子下部のシリコン酸化膜厚が熱特性・電気特性双方に影響することを見出し,この膜厚を最適化することでアナログ特性を最大化できることを示した。この成果を国際会議にて発表し,欧文誌に投稿・掲載された。また,素子単体の発熱と回路全体の熱設計の間を補完する手法の確立に向けて,配線と素子それぞれの熱特性を熱等価回路によってモデル化した。このモデルを用いることで,配線によって接続された素子の動作温度を見積もることができる。得られたモデルの適用から,カーボンナノチューブをはじめとした高熱伝導配線材料が素子温度低減に有効なこと,配線によって素子が冷却される条件を明らかにした。この成果も欧文誌に投稿し,採択された。今年度の研究から,微細トランジスタにおいては熱特性と電気特性双方が非常に重要となること,配線によって発熱を抑制できる可能性があることが示された。これらは将来の素子設計を行う上で非常に意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に行っていた熱解析を更に発展させ,現実のLSI動作に対しても発熱が重要であることと,その最適化手法を示すことができた。実験的な評価を行う前に発熱の実質的な影響を予測することは重要であること,また十分な成果を上げることができたことから,おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は発熱(熱輸送)とキャリア輸送の実験的評価に取り組む。理論的には未だ明らかになっていない熱物性パラメータが複数存在するため,発熱の実験的評価は必要不可欠であると考える。また,評価素子は共同研究先に提供していただくことも検討する。微細素子の熱輸送および非平衡キャリア輸送特性の実験的評価・解析を通して,熱特性と電気特性両方の要求を満たす素子設計指針を示すことを目指す。
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