2012 Fiscal Year Annual Research Report
拡張ナノ空間における単一細胞分析のための流体インターフェースの開発と応用
Project/Area Number |
11J09195
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 健太郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 単一細胞分析 / 免疫分析 / 拡張ナノ空間 / 極微量分析 |
Research Abstract |
近年、医学・生物学において、単一細胞内の極微量なタンパク質を定量する手法の開発が求められている。免疫分析の微小化が盛んに研究されているが、既存の手法では反応場の体積が単一細胞の体積よりも桁違いに大きく、分析は困難である。一方、我々はガラス基板上に作製した拡張ナノ空間(10-1000nm)を用いた分析手法の研究を進めている。拡張ナノ空間はfL-aLと単一細胞体積pLよりも小さな反応場をもつため、極微量試料の分析が実現できる。免疫分析を集積化するためには、ナノ流路内の定位置に目的タンパク質を選択的に捕捉することが課題となる。しかし、従来の基板接合法では、事前に修飾した有用官能基が高温ないしプラズマ照射によって損傷してしまう問題があるため、抗体の部分固相化は困難であった。そこで昨年度、真空紫外光リソグラフィーと低温接合による部分修飾の原理をDNAを用いて実証した。今年度はこの手法の利用をさらに進め、タンパク質の非特異吸着を抑制できる表面を設計し、抗体を部分的に固相化した免疫分析デバイスを作製した。抗原抗体反応のモデルとして抗マウスIgGおよび蛍光標識マウスIgGの組み合わせを用い、デバイス内の分子捕捉領域を蛍光によって可視化したところ、フォトマスクの幅とほぼ同じ大きさの分子捕捉領域が形成できていることが確認できた。構築した抗原抗体反応場の体積は86fLと従来と比べて5桁以上低減でき、単一細胞よりも小さな反応場を構築することにはじめて成功した。反応初期速度(反応開始後から18秒間)を濃度に対してプロットしたところ、良好な濃度依存性が確認できた。従来のマイクロ免疫分析と比べて、試料体積810fL、検出限界3zmolと桁違いに性能を向上できた。以上より、拡張ナノ空間における分子捕捉をはじめて実証した。本研究の成果は単一細胞内のタンパク質の定量分析に展開できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は拡張ナノ空間に免疫分析を集積化し、単一細胞分析システムを構築することである。今年度、免疫分析の集積化のための重要な課題である抗体の部分固相化および分子捕捉の実証に成功した。分子捕捉の性能は従来のマイクロ免疫分析と比べ桁違いに向上することが示された。単一分子レベルの免疫分析実現のための重要な結果が得られ、かつ今後の実験に必須のツールを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は酵素免疫測定法に展開し、酵素反応を用いた信号増幅によって単一分子レベルのタンパク質定量分析を目指す。当研究室で開発された微分干渉熱レンズ顕微鏡を用い、ナノ流路内に生成した微量の発色基質を高感度に検出する。目指すべき定量範囲は1から1000分子と計数領域であるため、非特異的な信号が計測結果に与える影響は大きくなり、結果の解釈は慎重を要する。そのため、バックグラウンドの定義および信号の定義について慎重に議論、実験を進める。
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Research Products
(6 results)