2011 Fiscal Year Annual Research Report
酵母におけるアルギニン・一酸化窒素の合成を介した新規抗酸化機構
Project/Area Number |
11J09201
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 明 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 一酸化窒素 / 酸化ストレス / 酵母 |
Research Abstract |
これまでに出芽酵母の新規な酸化ストレス耐性機構を解析してきた。その過程で、酵母においてアルギニンから一酸化窒素合成酵素(NOS)活性依存的に合成される一酸化窒素(NO)が細胞にストレス耐性を付与するというモデルを提唱している。また、酵母NOSとして世界で初めて、Tah18を同定している。本年度は、マイクロアレイによるNOの下流経路の探索及び、細胞内でのTah18の機能について解析を行った。 マイクロアレイを用いて、NO処理における転写誘導を解析した。その結果、NOは外部からの銅の取り込みを活性化させることが判明した。また、銅の取り込みの活性化を通して、抗酸化酵素であるsuperoxide dismutase 1(Sod1)の活性を増加させることも見出した。 次に、酸化ストレス下でのTAH18の転写レベルを調べたところ、高温および過酸化水素などの酸化ストレスによってTAH18は誘導された。また、TAH18の条件的破壊株を用いて、高温処理におけるNO生成能と生存率の関連性を調べた。その結果、TAH18の発現を止めると、高温処理下でもNO含量が増加せず、NO生成能が消失した。生存率も野生株に比べて著しく低下したが、NO処理により生存率は野生株並みに回復した。 本年度の研究から、出芽酵母にはTah18のNOS活性依存的に発生したNOによりSod1の酵素活性を調節することで、酸化ストレス耐性を獲得する機構が存在することを発見した。本研究は世界で初めて、真菌類のNOSを同定し、その生理機能を解析したという観点から非常に意義深い。このため、本研究はNO研究の画期的なブレークスルーとなる可能性を秘めている。
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