2012 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的アウェアネスの持続と抑制を変調する選択的注意の心理物理・認知神経科学的解明
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11J09238
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Research Fellow |
柴田 理瑛 東北福祉大学, 健康科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 視覚的アウェアネス / 選択的注意 / 眼球運動 / 自閉症スペクトラム |
Research Abstract |
本年度は、選択的注意を持続的にターゲットに向けるこが運動誘発盲におけるターゲットのアウェアネスにどのような変化を与えるかについて検討した。ターゲットの消失報告を解析したところ、ターゲットの色と形の変化を答えさせているため、よりターゲットに注意を向ける必要があると考えられる条件で、1回当たりのターゲットの消失時間が長くなることが示された(実験1)。一方、凝視点の色と形の変化を答えさせているため、より凝視点に注意を向けている条件では、総累積消失時間や消失回数が増大し、次に消失が生じるまでの時間が有意に長くなった。また、これらの結果は衝動性眼球運動(サッケード)や瞬きの回数によっては説明されないことが分かった。これらの結果は、ターゲットへの注意を奪ったほうがターゲットのアウェアネスがむしろ持続することを示唆している。 さらに本年度は、統合失調症のような児童青年期精神障害の一つで、近年注目されている自閉症における注意特性についての検討も行った。具体的には、自閉症スペクトラム指数質問紙を用いて健常大学生の自閉傾向を測定し、高得点群と低得点群の注意特性を比較した。参加者の課題は、画面の周辺左右のいずれかにターゲットが呈示されたら、画面中央の凝視点からターゲットへ眼球を動かすことであった。また、ターゲットの呈示直前に画面中央の注視点が消失するために注視点への注意が強制的に解放される条件と、注視点が呈示されたままターゲットが呈示されるために注視点への注意を自発的に解放しなければならない条件が設けられた。サッケードが生じるまでの時間(サッケード潜時)を解析したところ、両群ともに条件間で有意な差異が得られた。自閉症では注意の解放に障害があるため、条件間のサッケード潜時にはあまり差異がないとされているが、自閉傾向の高い健常者においてはこのような傾向がないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9に示したとおり、選択的注意を持続的にターゲットに向けるこが運動誘発盲におけるターゲットのアウェアネスにどのような変化を与えるか、自閉症スペクトラム指数高群と低群の注意特性を比較検討した。その結果、ターゲットのアウェアネスは注意を向けない方が維持されることを見出しつつある。自閉傾向が高い成人を対象とした場合には、自閉症で示される注意の解放障害はみられないことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に続き、運動誘発盲等の錯視を用いた心理物理実験を継続して行い、選択的注意とアウェアネスの関係を定量的に測定することを試みる。また、統合失調型パーソナリティ保持者や自閉症スペクトラム指数高群を対象とした、選択的注意と眼球運動に関する実験的検討を行う。
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Research Products
(4 results)