2011 Fiscal Year Annual Research Report
X線ガンマ線観測による超強磁場パルサー「マグネター」の放射過程の検証
Project/Area Number |
11J09311
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
神頭 知美 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中性子星パルサー / X線 / マグネター / かに星雲 / 「すざく」 / ASTRO-H |
Research Abstract |
中性子星パルサーのなかでも最も強い磁場をもつ「マグネター」は、その磁場が千億テスラにも達すると信じられている。マグネターからの放射も特徴的で、2004年には「hard tai1」とよばれる平担なスペクトルを持つ硬X線放射が発見された。本研究の目的はX線からGeVガンマ線の広帯域観測でスペクトルを抑え、マグネターの「hard tail」の放射起源を探ることであった。当該年度中にRea et al. (2011)により、数個の有名なマグネターについて同等の研究がなされた。その結果、GeVガンマ線は検出されなかった。今後は私が、他のマグネターに関しても同様の研究を行う。 最近になって、安定で明るい標準光源として検出器較正に使われてきた「かに星雲」から硬X線変動が検出された(Wilson-Hodge et al. 2011)。「かに星雲」は、中心の中性子星パルサーから放出されたプラズマが星間物質と相互作用して形成されるパルサー風星雲である。私は、硬X線帯域で世界最高感度を誇る「すざく」衛星搭載HXD検出器を用いた分光観測から、スペクトルにも変動があることをつきとめ、国際会議などで成果を報告し、投稿論文を執筆中である。 また、マグネターや中性子星パルサーの研究を長期的スパンで進めるために、2014年打上予定のX線天文衛星ASTRO-Hで高い時刻付け性能をもつシステムの開発にも引き続き注力している。ASTRO-Hでは世界標準衛星組み込みネットワークSpaceWireを使って時刻付け機能を構築する。この技術は今後の他衛星の開発にもいきるものであるので、私が主著者として、投稿論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超強磁場パルサーの放射機構を明らかにすることが本研究の目的である。平成23年度、マグネターの観測は行えなかったが、中性子星パルサーの典型である「かに星雲」のパルサーから発見されたスペクトル変動の兆候をつかんだ。これはパルサーの放射機構に迫る重要な研究といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き「かに星雲」の観測的研究を行う。とくに画像による放射領域の特定は加速機構を解く重要な情報をもたらす。しかし、我々が注目している硬X線帯域は今のところ星雲を分解して撮像がすることができない。 そこで、軟X線(0.5-10keV)で高い角度分解能を誇るChandra衛星の観測データを解析し、変動の諸元を探る方針である。 また、ASTRO-Hの時刻付け機能は検証段階に入っている。今後は、衛星搭載品を用いた試験を行い、打ち上げに向けた動作確認や性能評価を、平成23年度に引き続き私が主導して行っていく。
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