2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノカーボン系構造欠陥のマルチスケール熱伝導計算のための新規方法の開発
Project/Area Number |
11J09318
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
トーマス デレックアシュリー 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ナノカーボン / マルチスケールシミュレーション / 分子動力学法 / 熱伝導 / 金属吸着シリコン |
Research Abstract |
平成23年度は、ナノカーボン系における熱伝導マルチスケールシミュレーションを実行可能にする計算技術の基盤構築を目標とした。まず、複雑な原子スケールレベルでの熱伝導現象の理解に必要となる計算技術を構築し、実験家に対して有用となる情報を提案する。平成23年度は、ナノカーボン構造の中でも大変ユニークな構造体であり、これまであまり研究されていないコニカルヘリックスカーボンナノファイバー(CHNF)をターゲットとして研究を行った。この材料における熱伝導性を予測すべく分子動力学法を用いて検討を行ったところ、ナノカーボン構造体の中でも大変特徴的な性質(大変低い熱伝導性を示す1次元熱輸送)を有していることを見出した。CHNFに関しては、メソスケールにおける有効な計算モデルはなく、それゆえ本研究の分子動力学計算によって得られる構造情報が今後の発展において大変重要な情報となる。また、LAMMPSという分子動力学計算パッケージを使用するための準備作業を行った。この計算パッケージは、分子動力学計算では一般的に難しいとされている並列処理が施されており、CHNFのような複雑な構造体に適用し、本研究の計算を加速することも十分に期待できるものである。また銀-シリコン接合界面の分子動力学計算については、Ag-Si相互作用のレナードジョーンズ型ポテンシャルでの表現を試みたが、特定の吸着位置に関して妥当であったものの、表面全体での吸着エネルギーの吸着依存性については満足の行く結果にならなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ag-Si相互作用を表現するポテンシャルについては不十分な結果であるが、他の点では今後の研究のための基盤技術を構築でき、またコニカルヘリックスカーボンナノファイバーの熱伝導特性については予想外に興味深い結果を得た。以上を総合すると、おおむね順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の計算結果および計算技術基盤整備を踏まえ、計算結果の解析とマルチスケール計算技術構築を進める。Ag-Si相互作用については、3体効果を取り込んだポテンシャル開発も行う予定である。これはナノカーボン系における熱伝導とは直接関係はないものの、分子動力学計算技術の基盤構築において深く関わっており、ここで得られた知見や技術は今後大変重要となるものである。
|
Research Products
(5 results)