2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノカーボン系構造欠陥のマルチスケール熱伝導計算のための新規方法論の開発
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11J09318
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
トーマス デレック・アシュリー 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子動力学法 / 熱伝導 / カーボン / ナノファイバー / ナノチューブ / グラフェン |
Research Abstract |
今研究課題の主目的は、ナノカ』ボン構造の熱伝導特性を明らかにすることである。本年度は、前年度に引き続き、コニカルヘリックスナノファイバー(CHNF)とカップスタックナノファイバー(CSNF)の熱伝導特性を計算し、活発に研究されているカーボンナノ構造である単層カーボンナノチューブ(SWNT)とグラフェンナノリボン(GNR)の熱伝導特性と比較した。計算には分子動力学法を用いた。研究の過程で、広く使われている分子動力学パッケージLAMMPSがナノカーボン系の計算において不具合を生じる場合があることを見出し、これに対する対処法を確立した。計算の結果、CHNFとCSNFの熱伝導率はSWNTやGNRに比べて少なくとも2ケタ小さいことがわかった。さらに、熱伝導率の長さ依存性を計算した結果から、CHNFが拡散伝導的であるのに対し、CSNFは弾道伝導的な振舞いを示すことがわかった。また、CHNFは連続したナノリボンであることから高い電気伝導率が期待できる。このことと上記の低い熱伝導率とから、c田Fは高い熱電変換特性を示すことが期待される。CHNFの電気伝導率やゼーベック係数はまだ計算していないが、他のナノカーボン材料に対するこれらの値を用いて熱電変換の無次元性能指数ZTを見積もったところ、ZTが1を大きく超える可能性もあることがわかった。そこで、次年度はCHNFの電気伝導率とゼーベック係数を計算し、より信頼性高くZTを見積もる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コニカルヘリックスナノファイバーが熱電材料として有望である可能性を見出したのは重要な成果である。この点について詳しく解析するため、当初予定に比べナノスケールでの解析の比重が高まっているが、興味深い結果を得たことに伴うものなので、妥当と考えている。当初見込みと同等程度以上の成果を得ていることから、進展は順当と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
熱電材料としての可能性の検討は当初予定にはなかったことであるが、高いインパクトのある成果が期待できる課題であるので、この点についてさらに研究を進めたい。このために、コニカルヘリックスナノファイバーとカップスタックナノファイバーについて、電子状態及び電気伝導度の計算を行う予定である。使用するソフトウェアや計算モデルの検討等、遂行のための準備は既に進めている。これにより、熱電変換材料としての可能性がどの程度あるか、十分な検討を行うことができると期待される。
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Research Products
(3 results)