2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロダイン増強コヒーレントアンチストークスラマン光学活性顕微鏡の開発
Project/Area Number |
11J09356
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
森作 俊紀 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛋白質 / キラリティー / 二次構造 / 振動円二色性 / 水和フィルム |
Research Abstract |
初年度である平成23年度は、蛋白質の二次構造がもつキラリティーを利用して水環境中にある蛋白質選択的に指紋領域の振動スペクトルを検出するために、円偏光技術と赤外分光法を組み合わせた振動円二色性(vibrational circular dichroism:VCD)分光法を用いて、蛋白質の変性バンドが混在しないαヘリックス構造由来のVCDスペクトルの取得に成功した。具体的には、モデル蛋白質としてαヘリックス構造が支配的であるミオグロビンを用い、VCD測定時における膨大なバルク水の強い干渉を防ぐために、水和したミオグロビンから構成されるフィルムを作成した。そのミオグロビンの水和フィルムを用いて、視覚的には判別することができない、すなわち変姓による蛋白質の凝集・白濁化が起きていないレベルでのミオグロビンの変性を鋭敏に反映するVCDバンドを同定した。水和フィルム作成において、その変性由来のVCDバンドが検出されないようにフィルムの作成条件を制御することによって、未変性のミオグロビン水和フィルムを作成、変性バンドが混在しないαヘリックス構造由来のVCDスペクトルを取得した。さらには、そのような未変性のαヘリックス構造由来のVCDスペクトルを検出する方法を確立したことで、ミオグロビンを構成する柔軟なαヘリックス構造と強固な球殻構造をもつフェリチンの剛直なαヘリックス構造の微細構造の差異を分光学的に識別することにも成功し、これまでαヘリックス構造に由来すると言われていたVCDバンド内に、柔軟性、剛直性のαヘリックス構造の指標となるバンド構造を発見した。ここで確立した水和フィルムの作成方法および得られたスペクトル結果から、一般的に解釈が困難とされている蛋白質のVCDスペクトルをより精密な蛋白質の構造解析に適用可能となることが期待される。現在報文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、蛋白質の基本骨格と言える二次講造の光学活性の標準となる指紋領域の振動スペクトルの取得に成功した。このことから、現在解釈が困難と言われている蛋白質の振動スペクトルをより精密に解析可能となり、水環境中の蛋白質の構造解析がより深められることが期待される。さらには、レーザーヘテロダイン干渉技術を応用した細胞1個の物性評価が可能な顕微鏡を開発し、生きた細胞1個でのレーザー分光計測ができることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において開発したレーザーヘテロダイン干渉技術を応用した細胞1個の物性評価が可能な顕微鏡の精度を向上し、非線形ラマン分光計測へ展開する。
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Research Products
(10 results)