2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロダイン増強コヒーレントアンチストークスラマン光学活性顕微鏡の開発
Project/Area Number |
11J09356
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
森作 俊紀 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛋白質 / 光学活性 / 立体構造 / 水和 / 振動分光 / 水和フィルム |
Research Abstract |
採用第二年度は、初年度に引き続き、蛋白質の二次構造がもつキラリティーを利用して水環境中にある蛋白質選択的にその指紋領域の振動スペクトルが検出可能な、円偏光技術と赤外分光法を組み合わせた振動円二色性(vibrational circular dichroism : VCD)分光法を用いて、蛋白質の脱水和に伴う立体構造変化に特徴的なVCD活性の変化の検出に成功した。モデル蛋白質として、代表的な二次構造であるαヘリックス構造が支配的であるミオグロビン(Mb)を用い、その水和フィルムを作成した。水和量の減少に伴うMbのVCD活性の変化から、初めにアミドI領域の左活性の増加、それに続いてアミドI,アミドII領域の右活性の増加が観測された。初めの左活性の増加は、透明な水和フィルムで観測されたことから、その増加は、水和量の減少に伴うわずかな立体構造の転移過程を表している。一方、右活性の増加は水和フィルムの白濁の進行に伴って観測された。白濁の進行はMb間の凝集に依るものであることから、そのアミド1,アミドII領域の右活性の増加はMb間の凝集に帰属される。さらに、そのような左活性から右活性へのVCD活性の特徴的な反転は、他の典型的な二次構造であるランダムコイル構造が支配的であるカゼインにおいても観測された。これまで、その右活性の増加は、アミロイド繊維の形成や高温下での蛋白質変性においても報告されている。一方、初めの左活性の増加に関して、報告例はない。体内において蛋白質が機能を発現するときは、周囲の水和構造を変化させ、立体構造をわずかに変化させる。そのことから、観測された左活性の増加は、蛋白質の機能発現に関与する構造転移過程を表しているのかもしれない。また、左活性から右活性へのVCD活性の反転が、典型的な二次構造であるαヘリックスまたはランダムコイル構造を支配的にもつ蛋白質両方で見られたことから、蛋白質の機能発現機構やフォールディング機構に対して、キラル活性の観点から普遍的な理解への展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
円偏光技術と赤外分光法を組み合わせた振動円二色性(VCD)分光法を用いて、代表的な二次構造であるαヘリックスまたはランダムコイル構造をもつ蛋白質の脱水和に伴う立体構造変化に特徴的なVCD活性の変化の検出に成功した。このことから、蛋白質の機能発現機構やフォールディング機構に対して、キラル活性の観点から普遍的な理解への展開が期待できる。さらに、レーザーヘテロダイン干渉技術を応用した、単一生細胞の物性評価が可能な顕微鏡を開発し、その高空間分解能化、細胞の生活環の中での物性変化の検出に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度、2年度で開発したレーザーヘテロダイン干渉技術を応用した細胞1個の物性評価が可能な顕微鏡の非線形ラマン分光計測への展開を行う。
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Research Products
(4 results)