2011 Fiscal Year Annual Research Report
最先端の南極大型大気レーダーを用いた極中間圏雲と中間圏大気波動の物理の解明
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11J09377
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高麗 正史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 極成層圏雲 / 極中間圏雲 / 中層大気 / 重力波 / 惑星規模波 / 総観規模波 / ブロッキング高気圧 |
Research Abstract |
極成層圏雲(Polar stratospheric cloud、以下PSC)は冬季極域下部成層圏に出現する雲であり、オゾンホール形成において重要な役割を果たすことが知られている。申請者は修士課程において、複数の衛星観測データと再解析データを使ったデータ解析を行い、PSCに惑星規模波動、総観規模波動、重力波のそれぞれが与える影響の定量化を行った。本年度は、この結果をリファインし、投稿論文としてまとめ、Atmospheric Chemistry and Physicsに出版した。 次に、先行研究で指摘されている、対流圏の雲とPSCの同時出現についてのメカニズムの解明を目的としたデータ解析を行った。統計的に調べてみると、PSCと同時に出現する雲は、対流圏というよりも、対流圏界面およびその直上に位置していることが分かった。次に、メカニズムの解明のために、渦位を用いた解析を行った。その結果、ブロッキング高気圧が存在するときに、対流圏上層の雲とPSCが同時に出現する頻度が高いことが分かった。ブロッキング高気圧は背が高いため、中部成層圏まで負の温度アノマリが至っていることも明らかにできた。これらの成果について、複数の国内学会で発表済みであり、近々、論文として投稿予定である。 地球惑星科学専攻における「組織的な若手研究者海外派遣プログラム」を利用して、約1ヶ月間、Australian Antarctic Divisionでのインターンシップに参加した。そこで、南極Davis基地にあるライダーによる極中間圏雲(Polar Mesospheric cloud、以下、PMC)の観測データ、及びMFレーダーによる水平風の観測データを用いた解析を行った。具体的には、PMCの時空間変動と水平風の関係や、その関係の季節変化に注目した解析を行った。また、成層圏重力波の活動度とPMCの輝度の変動の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、衛星データを含めたPMCの解析をメインに進める予定であったが、本年度は修士課程の研究テーマであったPSCの解析の洗練と更なる発展に、主に力を注いだ。その研究成果を論文としてまとめることができた。PMCの研究についても、AADでのインターンシップ中に、Davis基地のMFレーダーのデータを使った解析が行えたので、南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)が本格稼働した時には、2地点間の比較も含めて、スムーズにデータの解析が進められると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
PMCの研究については、AADでの研究成果に加えて、衛星によるPMC観測データや、今年度末に本格稼動が予定されている、PANSYレーダーによる観測を組み合わせて、さらに発展させる予定である。PSCについては、偏光率と後方散乱比を用いたPSCの組成判別を行い、ブロッキング高気圧がPSCの組成に与える影響を調べる予定である。
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Research Products
(6 results)