2011 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀メキシコの地域社会における民衆信仰とネットワーク
Project/Area Number |
11J09387
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
和田 杏子 青山学院大学, 文学部, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | メキシコ / 植民地時代史 / インディオ村落 / 聖地巡礼 / ネットワーク / 地域社会 / 分村 |
Research Abstract |
平成23年4月から5月にかけて、入手済みの史料を基に18世紀後半のスペイン王室による政教関係再編の試みが、本研究対象地の地域社会にもたらした社会的影響に関する研究を行った。その成果は、同年5月15日に開催された第61回日本西洋史学会にて発表した。2011年7月から翌年3月にかけては、史料調査と現地の研究者との学術交流を目的にメキシコへ渡航した。具体的には、2011年8月から12月にかけてメキシコ大学院大学歴史学部の歴史学研究所に聴講生として在籍のうえ、ベルント・ハウスベルガー博士による「ヨーロッパにおけるナショナリズムの興り」のセミナーに参加した。翌年1月から3月にかけては、同博士の「海賊行為の歴史」に参加している。毎月担当するスペイン語での報告や討論を通じて、学術的な場でのスペイン語能力を身に付ける貴重な機会である。メキシコ大学院大学のセミナーに参加する傍ら、メキシコ国立総合文書館での史料調査を実施した。最新の所蔵文献カタログにあたって調査したところ、イスミキルパン行政区のみで旧カタログの該当件数約100件を遥かに上回る約2300件の関連史料が存在することが明らかになった。他の研究対象地域についても同様であり、うち多くは土地争いや、インディオ村落共同体間の諍いが基となって起こった裁判の記録であり、当時の研究対象地域のより詳細な社会情勢や社会的結合関係を知るうえで貴重な史料である。今後はオアハカ州、プエブラ州の事例に関わる史料を収集予定である。アウトリーチ活動としては、メキシコで研究活動を行う若手研究者らが運営する「メキシコ文化研究会」主催の定期講演会に参加し、メキシコ在住の日本人を対象とした講演(「裁判史料から見る18世紀植民地社会-セマナ・サンタの祭礼費用をめぐるせめぎあい-」)を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.当初、未発掘史料の入手を目的として、地方の州立文書館や教会関連文書館でも史料閲覧のために交渉を行うことを計画していたが、麻薬組織間抗争の激化によるメキシコ国内での治安の悪化を受け、これを断念した。2.文書館の所蔵カタログが以前に比べて大幅に拡充されたため、史料の選別と収集に想定以上の時間を割くことになった。3.当初メキシコ大学院大学のベルナルド・ガルシア・マルティネス博士のセミナーに参加し、メキシコ植民地時代の地理学的、生態学的な社会理論に関する知見を得たいと考えていたが、正規の学生でないという理由から参加を許されなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.地方の文書館での史料調査が困難となったため、今回はメキシコ市内で入手可能な史料のみで研究を遂行せざるを得ない。市内の国立人類学歴史学博物館にも本研究対象地域のマイクロフィルムが所蔵されているとの情報を入手したため、国立総合文書館と大司教座文書館に加え、こちらでも史料調査を開始している。2.文書の絶対数が多いため、該当史料をリストアップしその中からさらに研究上必要な史料をピックアップしたうえで、必要最低限のものを限られた期間内に収集する必要がある。3.セミナーへの参加は許可されなかったものの、参考文献目録を入手することができたため、それを基に自学する予定である。
|
Research Products
(2 results)