2012 Fiscal Year Annual Research Report
室温ナノインプリンントの転写メカニズム解明とその応用に関する研究
Project/Area Number |
11J09390
|
Research Institution | University of Hyogo |
Research Fellow |
姜 有志 兵庫県立大学, 物質理学研究科物質科学専攻, 特別研究員DC1
|
Keywords | 水素シルセスキオキサン / ヤング率 / 密度 / イオンエッチング / 共鳴振動数 / ポリジメチルシロキサン / ポーラス形状 / ネットワーク化 |
Research Abstract |
1.HSQ転写ピラー構造の密度測定 これまでの研究により、水素シルセスキオキサン(HSQ)転写ピラーのヤング率はHSQ薄膜のヤング率と比べ小さな値を示すことを確認している。HSQ転写ピラーのヤング率の低下はHSQ転写ピラーとHSQ薄膜とで材料特性が異なっていることが原因だと考えられる。そこで私は、交流静電気力による共鳴振動数測定法を用いて、HSQ転写ピラー構造の密度を調べ、転写ピラーと薄膜の物性の違いについて評価を行った。HSQ薄膜の密度1.08g/cm3に対し、HSQ転写ピラーの密度は1.68g/cm3となった。HSQ転写ピラーの値は薄膜の値に比べ、低い値となった。これはポリジメチルシロキサン(PDMS)モールドを用いてインプリントする際に、HSQの溶媒がPDMSナノポーラス内から蒸発するためHSQピラーもポーラス形状となり薄膜より小さな密度となってしまったと考えられる。 2.反応性イオンエッチング後のHSQ転写ピラー構造のヤング率変化 ナノインプリントプロセスはプレス技術によって樹脂を変形させるステップと、反応性イオンエッチング(RIE)を照射することにより残膜を除去するステップに分けられる。しかしRIE照射によって転写ナノ構造に現れる影響についてほとんど報告がされていない。そこで今回、私はRIE前後におけるナノインプリントによって作製されたHSQ転写ピラー構造のヤング率の変化についてカンチレバー法を用いて評価を行った。エッチング前のHSQのヤング率は4.6GPaだったのに対し、CHF3およびO2RIE後のHSQ転写ピラーのヤング率は8.2GPaおよび12.5GPaと、RIE前のヤング率と比べ増加した。これはRIE時に発生するプラズマエネルギーによりHSQが加熱されたため、ネットワーク化が進んだと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PDMSモールドを用いた室温ナノインプリントにより、水素シルセスキオキサン(HSQ)の高解像度パターン転写が可能であることを示してきた。これまでに、室温ナノインプリントにより形成されたHSQピラーのヤング率がHSQ薄膜に比べ小さいことを実験的に見出している。本年度はその原因探索を行い、室温ナノインプリントHSQピラーの密度低下が実験的に確認され、ヤング率の低下は密度低下に起因することを明らかにした。さらに、反応性イオンエッチングによる残膜除去後に、HSQピラーの表面改質によるヤング率の増大を見出している。 これらの研究成果は、HSQを用いた室温ナノインプリント特性の理解にとても重要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、ポリジメチルシロキサン(PDMS)モールドを用いた室温ナノインプリントにより、水素シルセスキオキサン(HSQ)の高解像度パターン転写が可能であることを示し、HSQ微細構造のヤング率および密度のついて明らかにしてきた。そこで本年度は1、2年目で得られた結果を基に、応用展開を行う。 市販の回折格子、マイクロレンズ等の光学素子は、樹脂成型品であり、耐熱性に問題がある。入射光強度の強い回折格子やプロジェクターのマイクロレンズアレイ等、耐熱性を要求する光学素子の要求が多くある。そこで成型材料として600℃アニールによりガラス化するHSQを用いた室温ナノインプリントにより、安価かつ高スループットで高耐熱性光学素子を作製する技術確立を行う。
|
Research Products
(6 results)